「政教分離」という言葉とは裏腹に、安倍政権のさまざまな局面で、宗教団体の影響がはっきりと見えるようになってきた。しかしそんななか、かつて自民党の支持組織といわれた有力団体、「生長の家」が参院選を前に「自民不支持」を表明するなど異変も起きている。
今回の参院選前、衆参同日選挙をめぐる攻防で圧倒的な政治力を見せつけたのは創価学会だった。
通常国会終盤、安倍晋三首相と麻生太郎・副総理、谷垣禎一・幹事長、菅義偉・官房長官の鳩首会談が行なわれた。その席で麻生、谷垣両氏は消費増税再延期の方針を打ち出した首相に「解散・総選挙で国民の信を問うべき」と迫った。
その時、創価学会と太いパイプを持つ菅官房長官は真っ向から反対した。
「同日選は公明党が反対です」
同日選で有権者が混乱し、公明党の議席に直結する比例代表で大量の無効票が出ること、また投票率が上がることで学会票の価値が下がることを懸念し、創価学会は同日選に消極的だったとされる。
安倍首相がそうした反対を押し切って解散に踏み切った場合、自公の選挙協力に重大な支障が出る可能性があった。自民党選対委員長代理の経験がある菅氏が心配したのは、その学会票の離反だった。政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「創価学会の基礎票はざっと800万票、衆院の各小選挙区に2万~3万票を持つ。自民党が前回総選挙の小選挙区で勝ったのは223人。次点との差を見ると2万票以内が60人、3万票以内は94人もいる。学会票の上乗せがあったから大勝できたわけです。
もし、安倍首相が解散に踏み切って自公の選挙協力にひびが入った場合、学会票の離反で自民党は大きく議席を減らす可能性が高かった」
早くから同日選を念頭に置いて国会日程を組み、「解散が頭をよぎった」という安倍首相だが、土壇場で菅氏の忠告に従って解散を断念した。真相は、自民党に票を出す創価学会「800万票」のパワーが首相の解散権を封じ込めたといっていい。
さらに参院選後は、「憲法9条の理念・精神に反する改正には反対」(広報部)という創価学会と安倍首相の間で、憲法改正をめぐる軋轢が予想される。
※週刊ポスト2016年7月1日号