国際情報

中国の犯罪集団 妊婦や授乳中の母親をリクルートして利用

妊婦が犯罪に手を染める例が増えているという(写真:アフロ)

 手段を選ばないとはこのことだろう。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 今年4月、浙江省杭州市の病院で入院中の患者のスマートフォンが盗まれるという事件が起きた。被害にあったのは杭州市内にある複数の大病院で、狙われたのは主にスマートフォンの最新機種であった。

 事件は、5月末に地元警察が記者会見したことでメディアが一斉に取り上げられることとなったのだが、ここにはメディアが飛びつく一つの重要な要素があった。

「実は、4人から成るこの窃盗団のメンバーは、全員が女性であったというだけでなく、妊婦あるいは授乳中のママであったという特徴があったのです」

 と語るのは北京の夕刊紙記者である。

「被害の通報が入ったのは4月13日のことです。杭州市公安局上城区分局小営派出所は2件の窃盗事件について調べ始めたところ、そこに杭州市内の別の病院からも被害に遭ったという報告が続けて飛び込んできて、事件が広がっていったのでした。

 こうした動きを受けて同分局の刑事偵査大隊が作戦室を設置。各病院の監視カメラを徹底的に見直したのです。その結果、4人の女性のグループに行き当たり彼女たちを特定し、逮捕に至ったということでした」

 だが、実際に逮捕といっても簡単なことではなかったようだ。というのも4人は地元杭州市の住民ではなく湖南省からわざわざ出張してきていたからだ。

 4月15日、地元警察は4人のうち3人がすでに湖南省に向かう列車のチケットを購入済みであることを突き止め、当日、列車に乗り込んでいるところを発見し、逮捕したという。

 それにしても身重の女性が長い時間かけて移動してきて、さらに危険を冒して窃盗を働くなどあまりにリスクが高い。なぜそんなことになるのだろうか。前出の夕刊紙記者はこう解説する。

「実は、中国もいま警察の横暴に対して市民の目が厳しく、ちょっとしたことで暴動に発展しかねない事情があるのです。とくに妊婦に対する行動には神経質になっているのです。ですから犯罪グループはそうした状況を利用して、末端で警察に捕まりやすい仕事をさせるために妊婦や子連れの女性をリクルートしているのです。

 例えば、高級ホテルの前で客引きをしたり、ビラを配っているのも、いまはたいていそうした女性です。これは中国一の歓楽街と称された東莞市に大規模な一斉捜査が行なわれて以後に定着した傾向です」

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
【独自】「弟がやったことだと思えない…」中居正広氏“最愛の実兄”が独白30分 中居氏が語っていた「僕はもう一回、2人の兄と両親の家族5人で住んでみたい」
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新田恵利(左)と渡辺美奈代があの頃の思い出を振り返る
新田恵利×渡辺美奈代「おニャン子クラブ40周年」記念対談 新田「文化祭と体育祭を混ぜたような感覚でひたすら楽しかった」、渡辺「ツアーも修学旅行みたいなノリ」
週刊ポスト
放送時間を拡大しているフジテレビの『めざましテレビ』(番組公式HPより)
日テレ『ZIP!』とフジ『めざまし』、朝の“8時またぎ”をめぐるバトルがスタート!早くも見えた戦略の違い
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
公的年金は「社会的扶養」「国民の共同連帯」「所得再分配機能」(写真提供/イメージマート)
《まるで借りパク》政府の基礎年金(国民年金)の底上げ案 財源として厚生年金を流用するのは「目的外使用」ではないのか、受給額が年間8万円以上減額も
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン