現在のドル/円相場は、ジリジリ上がってストンと落ちるという貿易黒字下での相場の動きに近くなっている。30年の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏が、ドル安円高進行に対する政府や日銀の対応の甘さについて指摘する。
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ドル/円相場が潜在的なドル安円高で進行するなか、政府・日銀の対応は、2月末の上海G20で通貨安競争回避が確認されたものの、「円高にはしかるべき措置をとる」といった円高阻止のトークアップ発言(要人発言で相場を持ち上げようとすること)で対応していました。
しかしルー米財務長官から「為替の動きは秩序立っている。日本も通貨安競争回避は確認している」と指摘を受け、また米財務省の作成する通貨安を誘導している国や地域の監視リストに日本も入ったことから、トークアップ発言の効力も限定的になってしまったようです。
なお、最後の政府・日銀が介入した水準は、2011年秋の1ドル=77円近辺ですので、それに比べれば現状のレートははるかに円安であることと、「黒田ライン」の1ドル=125円(黒田東彦日銀総裁が「これ以上は行き過ぎ」といった水準)から、たかだか20円前後の円高ということを考えると、政府・日銀がドル買い介入に踏み切るというのはいくらなんでも無理があると思います。
それより、日本の政府も産業界もあまりに円安頼みになっていることが気になります。話は少し変わりますが、最近外国人旅行者が急増し、2020年の目標を4000万人に上方修正されました。
確かに観光客誘致は地元の自助努力があると思いますが、財布の口の堅い外国人が今の日本に魅力を感じている大きな理由のひとつは、「為替が円安だから」ということです。ここにも円高方向に為替水準が動くことによって、安易な目論見が狂う可能性を秘めていることに注意が必要です
※マネーポスト2016年夏号