1962年4月、『週刊少年サンデー』から4回の連載ということで始まった赤塚不二夫氏原作の『おそ松くん』。
それから半世紀以上が経った2015年10月に放送開始となった『おそ松さん』(2016年3月終了)が大ブームを巻き起こしている。おそ松さんとは、成人になったおそ松くんのこと。六つ子全員ニートという設定で、5月11日に発売された『anan』など、表紙を飾った雑誌は、出版不況が叫ばれるなか、ほとんど完売となっている。
勢いは加速する一方だ。六つ子が順にジャケットを飾るアニメのDVDも、6月24日に「第六松」が発売。6月28日からサントリー『オールフリー』がスタートするキャンペーンでは、『おそ松さん』の限定動画が特典となっている。
都内在住の会社員・佐々木裕子さん(仮名、25才)が『おそ松さん』にハマったきっかけは、同じ会社に勤める同期の言葉だった。
「深夜アニメがスタートしてしばらくしてからのことでした。同期女子から“一緒に『推し松』つくろうよ”と言われたんです。もちろんリアルタイムでもないし、ちゃんと読んだことはなかったのですが『おそ松くん』は知っていたので、“なに、『おそ松さん』って?”という感じでした。
でも彼女はそんなのお構いなしで、“私は末っ子キャラでかわいい『トド松』推し!”とか言うんですよ」
わけがわからないまま、何気なく『おそ松さん』を見た佐々木さんは、大きな衝撃を受けたという。
「物語の展開が読めないし、ギャグも予測不可能で、ゲラゲラ笑える。それに同じ顔の6つ子が、台詞や動き、帽子やサングラスなどちょっとしたファッション小物でどんどん個性化していくんです。どのキャラもかわいくて、色遣いもおしゃれ。ちなみに私の推し松は死んだ魚のような目をしている『一松』です」(佐々木さん)
元『週刊少年キング』の編集者で、『おそ松くん』担当者だった小林鉦明さん(73才)は言う。
「『おそ松くん』が掲載されていた頃、女性が少年漫画を読むことはほとんどなかったので、読者のほとんどが男性。『おそ松さん』の原作は『おそ松くん』ですが、まったく別物だと思います。おもしろさなども全然違いますから。
しかし『おそ松さん』のおかげで女性ファンがついて、若い人たちも『おそ松くん』を知ってくれたことを、先生はお墓のなかで喜んでいるかもしれないですね」
赤塚不二夫の長女で、『フジオ・プロダクション』社長を務める赤塚りえ子さん(51才)は「『おそ松さん』がきっかけで『おそ松くん』が読まれていることが本当にうれしいです」と言う。
※女性セブン2016年7月7日号