内視鏡やカメラでトップシェアを誇る老舗光学機器メーカー、オリンパスに巨額の損失隠し事件が発覚してから5年。この5月には過去最高益を更新するほどV字回復していたはずだが、果たして本当に改革は果たされたのだろうか。損失隠し事件をスクープしたジャーナリスト・山口義正氏が入手した極秘内部資料に記されていたのは、まるで5年前の再来のような新たな疑惑だった。オリンパスがひた隠す重大問題の全容を山口氏が暴く。
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まずは筆者の手元にある何通かの内部文書をもとに、問題の概要から説明しよう。文書はいずれもオリンパス関係者や弁護士たちが作成したもので、表紙にオリンパスのロゴとともに“TOP SECRET 極秘”“S-RANK”の印が捺されている社内資料「2007年11月23日時点OSZ税関問題中間報告書」や、オリンパスが大手法律事務所の西村あさひ法律事務所や、シャーマンアンドスターリング外国法事務弁護士事務所の弁護士を起用して昨年10月29日にまとめさせた「最終報告書」などだ。
最終報告書の冒頭には、「贈賄行為(その共謀を含む。)の有無及び内部統制上の問題点の有無等に関する調査を行いました」とある。
贈賄疑惑の舞台となったのは、中国広東省・深センにある Olympus(Shenzhen)industrial ltd.(OSZ)。映像機器の製造を担うオリンパスの子会社で、OSZは部品を深センに輸入して、加工した製品を輸出している。
きっかけは2006年3月に中国で輸出入業務を管理する北京総署がOSZに監査を命じたところ、通関帳簿上の在庫と倉庫にある実際の在庫との間に大幅な食い違いが判明したことだった。マイナス在庫分の総額は6億9400万ドルで、当時の為替レート(1ドル=90円)で換算すると約630億円。公認会計士たちが「通常ならありえない」と口を揃える途方もない額である。