60歳の誕生日には、バトンを渡すつもりだった──退任時期について、そう語っていたソフトバンクの孫正義・社長(58)は大きな方針転換に踏み切った。
米グーグルからヘッドハントし、昨年、後継者に指名したばかりのニケシュ・アローラ氏(48)が、6月22日付で副社長を退任すると発表されたのだ。
「インド出身のアローラ氏は、グーグルで営業・マーケティング・提携戦略の最高責任者を務めた人物で、もともとは孫氏がグーグルと商談にあたる際の交渉相手だった。アローラ氏の才覚を評価した孫氏が、直々に口説いてソフトバンクに引っ張ってきた」(大手紙経済部記者)
グーグルからの移籍に際しては、契約金を含む報酬165億5600万円が支払われ、孫氏はアローラ氏を「最重要の後継候補」と公言していたが、その禅譲方針がわずか1年で撤回されたわけである。
「アローラ氏は数年のうちに社長に就任して経営の舵取りを担いたいと考えていたが、孫氏が“まだやりたいことがある”と続投に色気を見せ、今回の決別に至ったと見られている」(同前)
アローラ氏の退任発表後に行なわれたインタビューで、孫氏は60歳で社長を退くつもりだったと明かした上で、こう述べている。
「あと1年で60歳という年齢になって急にさみしくなった」
「少なくとも(今後)5~10年は社長として走りたい」(22日付、日経新聞電子版)
経営トップに残るという新しい判断をした孫氏は何を目指すのか。
「ソフトバンクは、中国電子商取引大手のアリババやゲーム子会社であるガンホー・オンライン・エンターテイメントの保有株を売却するなどして、2兆円近いキャッシュを調達している。これを元手に大型買収を仕掛け、ビジネスを広げていくのではないか」(前出の大手紙記者)
■撮影/横溝敦
※週刊ポスト2016年7月8日号