ヤクルト・山田哲人が、もうすぐ24歳という若さながら球界のレジェンドになりそうな勢いで記録をつくりつつある。早くもホームランは23本(6月22日現在)でセ1位、交流戦では1カードわずか3試合ながらパ全球団同一シーズン11球団からホームランだ。当代最強打者のバットをどう封じるか。球史に燦然と輝く「レジェンド・オブ・レジェンド」、400勝投手のカネやんこと金田正一氏に秘策を聞いた。
「あのバッティングは素晴らしいよ。高度な技術とたぐいまれなパワーを持っとる。インサイドのさばき方も一流。狙った球は必ず振ってくるし、ハッキリいって山田には穴がない」
おぉ、現役選手を大絶賛とは珍しい。さすがのカネやんでもお手上げ?
「バカモノ、ワシを誰だと思っているんだ! この金田さんの球を打てる選手などいるわけがない。間違いなく180キロは出とるであろう速球に、天井から落ちてくるような落差のカーブ。手も足も出ませんよ。3球三振に決まっとる!」
金田氏の超人的な投球(と自信)をもってすれば、たとえ山田でも敵ではなさそうだ。でも、これではあまり現役投手の参考にはならない……。
金田氏は、「ワシほどの球を投げられなくても山田を崩すカギはある」と投球術の極意を教えてくれた。
「そもそもワシは最近の投手と頭のデキが違う。自分のフォームの中で腕を早く出したり遅く出したりして、投球のテンポを微妙に変えているからな。それだけ懐が深いピッチングをしていたんだ。山田に穴があるとすればテンポだ。最近の投手を見ていると、相手が体勢十分になってから投げている。アホか、相撲の立ち合いじゃあるまいし……。打者の構えが整う前に投げたっていいんだよ」
伝説の投手をここまで熱くさせるのだから、やはり山田は「ホンモノ」だ。
※週刊ポスト2016年7月8日号