日本で生まれた羊肉料理といえば、北海道民のソウルフード「ジンギスカン」だ。鉄板の羊肉がジュウッと音をたてると食欲をそそる甘い香りが立ち上る。
聖地・札幌には名店がひしめいている。老舗『成吉思汗だるま本店』は、開店前から行列ができる超人気店。その理由は、創業以来受け継がれる門外不出のタレにある。肉や野菜のエキスが溶け出したタレを白米にかけた〆のお茶漬けに、リピートする中毒者が続出。麦茶など数種類をブレンドした香ばしいお茶が、タレと絶妙にマッチして堪らない。女将特製のキムチを入れると、グッと風味が増す。
地元客に愛される『さっぽろジンギスカン本店』では、自家製タレをジャスミン茶で割ってスープで〆る。肉汁の旨みも余韻として楽しめる清涼感のあるスープに胃もスッキリする。シナモンやバジルが隠し味の特性ダレはジャスミン茶で割り、〆の薬膳スープに。
札幌ジンギスカンのタレ文化で異彩を放つのは、『札幌成吉思汗しろくま札幌本店』。あえて塩だけで味わう道産の生ラムは噛むほどに甘みが感じられ、羊の美味しさに開眼するはずだ。フレッシュな生ラムはシンプルに塩で頂く。塩の甘みが肉の甘みを十分に引き出す。
タレも肉の食べ方も、店の数だけ個性がある。札幌のジンギスカンには、人々を引きつけてやまない魔力がある。
■取材・文/渡部美也 ■撮影/小松潤
※週刊ポスト2016年7月8日号