まだ6月にもかかわらず、すでに全国250か所で真夏日を記録し、もはや気分は梅雨を通り越して夏真っ盛り。お盆休み期間の航空券の早期予約割引サービスも始まり、すでに計画を立てている人も多いだろう。そんななか、高齢者たちは、早くもお盆の帰省を考えて、ため息をこぼしている。
「孫疲れ? それもあります。でもここ数年のお盆は、子供たちがどうもお小遣い目当てといいますかね…。もちろん、それまでだって会えばお小遣いをあげていましたけれど、もらって当たり前というような風潮になってきているから、私たちの世代には受け入れ難いんですよ」(静岡在住・63才)
お盆のお小遣い──今それは“お盆玉”として広まっている。マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏が説明する。
「もともと、山形県など東北にあった、お盆の時期に丁稚奉公している人を労うため、衣服や靴などをプレゼントした風習がもとだといわれています。郵便局がポチ袋を販売し始めてから全国に広がり出しています」
確かに、お盆に帰省すると久しぶりに会った祖父母が孫にお小遣いを渡すのは、それほど特異なことではない。しかし、この違和感…。別の女性(兵庫在住・65才)も言う。
「お盆は親族みんなで故人を偲ぶ日。そんなときに、“お盆玉”としてお金を渡す意味がわかりません。お年玉だけでも大変なのに、この上、お盆までも。勘弁してほしいです」
夏版の“お年玉”ともいわれる“お盆玉”。しかしその性格は大きく異なる。そもそも、「お年玉」は新年に神様へのお供え物である鏡餅を、家長が子供たちに分け与えたことが始まり。神様の宿った餅を分け与えることで福を呼び込もうという意味が込められている。ちなみに、近年のお年玉の相場は「年齢÷2×1000円」。
2016年の幼稚園から大学生までの1人あたりがもらう合計平均額は3万5035円(京都信用金庫調べ)にものぼっている。日本郵政の広報担当によると、「2014年から、お客様の要望により“お盆玉”ポチ袋の販売を開始しました。2015年は売上前年比106%と、順調に売れています」と徐々に浸透しているようだ。金額の相場はお年玉と同じか、やや少なめといわれている。
祖父母が孫にかけるお金は年間26万円以上ともいわれており、これがひいては日本経済を潤すとの見方もあるなか、“お盆玉”をバッサリ否定することはない。ただ、前出の西川氏もこう釘を刺す。
「お盆とは、本来、ご先祖さまの霊を迎え入れ慰めるために、家族でお墓参りをしたり、ご近所が集まって盆踊りに興じたりする仏教行事です。そんな大切な心を忘れてしまい、ただお金を受け渡しするだけの拝金主義に陥らないようにしたいですね」
バレンタインやハロウィンなど、異国の文化さえも上手にアレンジして一大ムーブメントにしてしまう日本人。しかし“お盆玉”に関しては、新ブームにのるだけじゃ×。「お盆玉ちょうだい」って言われたら、「お盆ってどういう日か知ってる?」と問いかけてみるのもいいかもしれない。
※女性セブン2016年7月7日号