見慣れぬアフロ頭の中年女性が、一躍「時の人」となっている。元朝日新聞社の記者で論説委員・編集委員を歴任した稲垣えみ子氏(51)だ。今年1月に退社すると、テレビやラジオのコメンテーターとしてひっぱりだこ。6月には『アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。』と『魂の退社』の2冊を一気に出版した。
見ためのインパクトもさることながら、注目を集めているのは徹底した「節電」だ。オール電化のアパートに住んでいるにもかかわらず、〈原発事故以来、電気に頼らぬ生活とは何かが知りたくて、冷暖房を使わぬ暮らしをしている〉(『アフロ記者~』より)。
ドライヤーを使わないのでトレードマークのアフロ頭は自然乾燥させる。冷蔵庫も使っていないので、野菜などは日持ちするようベランダに干してから食べている。
節電にかける情熱は尋常ではなく、彼女の退職後の生活に密着した『情熱大陸』(TBS系)では、カメラが回っているのに室内灯を点けなかったために台所での料理シーンが真っ暗。スタッフが高感度カメラを用意したにもかかわらず包丁を握る手元が全く映らない。たまらずカメラマンが文句をいう爆笑シーンが放映されたほどだ。
稲垣氏は至って真剣だ。
「電子レンジを失なった代わりに蒸し器で温めたご飯のおいしさを知り、掃除機を捨てたことで自分が『掃除嫌い』ではなく、絡まるコードやうるさい音が苦手な『掃除機嫌い』だったことに気付けたんです」
節電の唯一の例外は、執筆活動だ。原稿作成だけはパソコンで行なっている。
「電気の使用を否定しているわけではなく、貴重な電気を大切に使いたいだけ。ラジオ、電灯、パソコン、携帯電話に限って使用していても、電気代は毎月200円以下。不便は全くありません」
一緒に生活するのはチト厳しいか。
※週刊ポスト2016年7月8日号