【5分でわかる!ベストセラー】『言ってはいけない』橘玲・著/新潮新書/842円
【評者】伊藤和弘(フリーライター)
現代社会では「人間は平等」とされています。また、いくら成績が悪い子供でも「やれば(努力すれば)できる」と多くの親は信じています。しかし、本当にそうでしょうか? 誰もが薄々感じていながら、直視しようとしなかった“真実”。本書はそれを最新のアカデミズムから明らかにした一冊です。
現代の行動遺伝学によると、IQ(知能指数)の遺伝率は77%。つまり、77%は先天的な遺伝で、残りの23%は後天的な環境で決まるのです。まさに「カエルの子はカエル」、親の頭が悪ければ、いくら勉強しても限界があるというわけです。特に能力や才能の形成に、「子育て」はほとんど関係ないのだそうです。
また、本書によれば精神病の遺伝率はIQよりも高く、統合失調症と双極性障害の遺伝率はどちらも80%以上。もちろん必ず発症するわけではありませんが、身長の遺伝率(66%)や体重の遺伝率(74%)よりも高いのです。恐ろしいことに「犯罪者の子供は犯罪者になりやすい」ことも記されています。イギリスで約1万人を調査したところ、「サイコパス」と呼ばれる反社会的精神障害の遺伝率は81%もあったそうです。
続いて、女性なら無視できない「美貌」についての“真実”も語られます。「人間の価値は外見では決まらない」ことになっていますが、実際は「美人が得をする」ことは誰でもご存じですよね?
経済学者のダニエル・ハマーメッシュは、具体的に「美人がいくら得するか」を調べました。顔の美しさを5段階で評価し、平均を3点としたとき、4点以上の女性は平均より8%収入が多く、2点以下の女性は4%少ない、と発表しました。
面白いのは、「男性のルックス」も収入に影響すること。イケメンは平均より4%収入が多く、女性に比べると差が少ない。ここまでは納得ですが、ブサイクな男性はなぜか平均より13%も収入が少なかったそうです。
進化生物学によると、オスは自分の精子をたくさんのメスにばらまこうとするため、本能的に浮気に走りやすいといいます。これはよく聞く話ですね。では、メスの本能は?