ETF(上場投資信託)は個人投資家の資産運用手段として定着している。しかし、競合商品である投資信託の進化、あるいは、改善されない商品性の問題などがあり、今後も順調に残高が拡大していくかどうかは不透明になりつつある。現在、ETFが置かれている状況を解説していこう。
ETFが国内に登場したのは1995年5月。当初は銘柄数が少なかったことで伸び悩んでいたが、2000年代半ば以降は、銘柄数も増え、取引残高も順調に増加。2015年の売買代金は61兆円まで膨らんでいる。日銀が量的金融緩和政策で年間3兆円以上買い入れていることも、ETFの市場が拡大していることの証拠と言えるだろう。
ETFは、投資信託におけるインデックス型と商品内容がもっとも近い。いずれも内外のさまざまな株価指数や債券指数、商品指数ほかに連動するからだ。
一般的な投資信託と違うところは、まず取引所に上昇している点だろう。そのため、株式と同じように、証券取引所がオープンしている時間帯はリアルタイムで価格が変動し、異なった価格で繰り返し売買ができる。一方、投資信託は売買の価格となる基準価額が1日に1回しか設定されない。したがって、その価格でしか売買することができないのである。
さらに、コストの面でも違いがある。購入手数料や保有している期間中に徴収される信託報酬は、ETFの方が投資信託よりも割安に設定されており、これまでETFのメリットとされてきた。
しかし、最近、このメリットが薄れつつある。インデックス型の投資信託のコストが急速に下がっているからだ。かなり前から、ネット証券では購入手数料を無料とするところが多かった。そこへ、昨年から今年にかけての信託報酬の引き下げが、コストの低下に拍車をかけている。
例えば、国内最大の残高となっている『日経225連動型上場投資信託』の信託報酬は0.24%。それに対し、同じく日経平均株価に連動する『日経225インデックスe』の信託報酬は0.2052%と下回っている。
こうした低コストのインデックスファンドは、それほど多くはない。全体的に見れば、コストが割安なETFの方が、まだまだ多いだろう。一部のネット証券では、ETFの売買手数料を無料にしているところもある。しかし、以前ほどの優位性は失われつつあるのは確かだ。
※マネーポスト2016年夏号