2015年8月13日、元プロボクサーで慶応大学法科大学院生だった小番一騎(こつがい・いっき)被告(当時・25才)が、妻の浮気相手の男性弁護士の性器を枝切りはさみで切断。逮捕・起訴された。事件はなぜ起こったのか。その背景と真相に迫る。(2016年6月25日更新)
◆犯行のきっかけとなったのは妻の「嘘」か
︎「酒を飲まされ性行為を強要された」と言い逃れ
「男性弁護士との関係を疑われた妻は、“酒を飲まされ性行為を強要された”と虚偽の言い逃れをした、といわれています。そしてこれを信じた小番容疑者が怒りのあまり、残忍な犯行に至ったとみられているんです」(全国紙社会部記者)
夫と警察に別々の告白。「真実」は?
妻は被害者の男性との不倫関係を清算しようとし、小番被告に「セクハラを受けている」と“被害”を相談。小番被告は新宿警察署を訪れ、被害者の男性を強姦罪で刑事告訴することを相談した。だが、警察は動かなかった。それもそのはず、妻は警察官に「無理やり姦淫されたことはない」と「真実」を事前に明かしていたのだ。
妻は友人にLINEで「“セクハラうけてて思い詰めて余裕がなかった”と喋ったら仲直りできた」とこっそりホンネを明かしている。
◆悲惨な事件の現場
持参した枝切り鋏で根元から性器を切断
顔面を何度も殴り、意識が朦朧とした被害者のズボンをおもむろに脱がせると、彼の男性性器を持参した枝切りばさみ(全長20cm、刃渡り6cm)で根元から切り落とした。切り取った陰茎部分を握りしめて部屋を飛び出ると、ビル内の共用トイレに流してしまった。被害者は命に別状はないが、署員たちの懸命な下水道捜索もむなしく、流された男性性器はいまだ見つかっていない。
◆局部を切断した目的は?
下腹部切断は社会的抹殺狙う「理性的復讐劇」
「局部の切断なら、殺人罪ではなく傷害罪で済む。それでいて、狭い法曹の世界では、“局部を切断された弁護士”という強烈なイメージが一気に広まる。相手へのダメージもはかりしれないうえ、社会的に抹殺できるわけです。理性的な復讐劇なのだと思います」(ノンフィクションライターの杉浦由美子さん)
◆局部切断の激痛はどれくらい?
指とは比較できぬ激痛
「陰茎は非常に神経が細やかなところなので、指の切断とは比べものにならない激痛が走ったことでしょう。切断された瞬間、あまりの痛みで朦朧としていた意識もはっきりしたと思います」(元東京都監察医務院院長で法医学者の上野正彦氏)
吹き出す大出血 ショック死の可能性も
「陰茎には4本の動脈が通っているので、切断時には勃起状態でなくても大量の出血を伴う。体内の全血液量の3分の1が失われれば、一気に血圧が下がって出血性ショック死に至ることもあり得ます」(よこやま腎泌尿器科クリニック・横山光彦院長)
◆妻の奇妙な言動は「失感情症」ゆえ?
被告の妻は「アレキシサイミア」か
「この妻は決定的に想像力が欠如している。自分の言動で相手がどう反応するのか、どう行動するのか想像できず、他人の痛みに共感することができない。局部切断にしても“切った”と思うだけで、どれだけ痛くて怖い思いをしているのかがわからないんです。何をしても、何を見ても現実感がない『離人症』の可能性が高いと考えられ、おそらく『アレキシサイミア(失感情症)』に陥っているのでしょう」(精神科医の片田珠美さん)
「アレキシサイミア」とは楽しい時にワーッと喜べなかったり、怒りたいときに怒れなかったり。想像力が乏しく、自分の感情に気づくことも、表現することも難しい状態を指す。
事件については他人事のような発言
「まさか切るのではと頭をよぎった。私からは被告人の手元は背中で隠れていたので見えなかったが、さすがにそれはまずい、止めないと、と思っていたところ『シャキン』と音がしたので『あー、やっぱり切っちゃった』と思った」(小番被告の妻の供述)