参院選では安倍晋三首相の行くところ黒山の人だかり。ハイになった首相は、「気をつけよう。甘い言葉と民進党」。そう応援演説でお決まりのフレーズでアベノミクスの成果を訴えると、「共産党にこの国を任せていいのか」と拳を振り上げる。
与野党大接戦の1人区で自民党候補を支援する建設会社社長は、「総理が来るから20人動員しろと割り当てがあった。仕事をもらうためには仕方がありませんからね」と露骨な言い方をした。集票マシンもカネのためにフル稼働だ。
テレビもネットも自民党のCMラッシュ。党のホームページやネットにアップされた〈この道を。力強く、前へ。〉と題する自民党の新CMは、6月25日の公開から4日間で35万回以上再生された(YouTube)。雇用110万人増加、賃上げ2%達成3年連続といったアベノミクスの成果を強調するテロップに続いて、オバマ大統領が広島を訪問した際、原爆死没者慰霊碑の前で安倍首相と握手した写真と、伊勢志摩サミットで首相が各国首脳と円卓を囲む写真が映し出される。
安倍首相は広島を訪問したオバマ大統領の人気ぶりに「オバマが選挙の応援に来ればスゴイな」と周辺にジョークを飛ばしたと言うが、実際に米国の大統領を選挙CMに“動員”したのは前代未聞だろう。
「政党CMは政治活動として制限されてはいないが、広島訪問は核廃絶を提唱してきたオバマ大統領自身の判断で実現したもの。それを政党CMで自民党の外交成果のように打ち出すのは有権者に誤解を与える。いくらなんでもやり過ぎでしょう」(田島泰彦・上智大学新聞学科教授)
さすがにテレビ放映は見送られたが、ネットでは堂々と流し続けている。
※週刊ポスト2016年7月15日号