企業と株主が直接対峙する株主総会は、大きな変貌を遂げた。かつては、総会屋と呼ばれる強面の男たちの怒号が飛び交っていたが、総会屋に代わって台頭してきたのが外資系投資ファンドなどに代表される“もの言う株主”である。
最近ではアクティビストとも言われる彼らは、総会屋のように少数株主ではなく、議決を左右するほど大量保有し、増配の要求や取締役選任に異議を唱えるなど、企業経営に直接、影響力を行使するのが特徴だ。
象徴的だったのが村上ファンドの村上世彰氏による、アパレルメーカー「東京スタイル」を舞台にしたプロキシーファイト(委任状争奪戦)だ。
2002年に同社の筆頭株主となった村上ファンドは、1280億円あった同社の内部留保などを使って自社株買いを行なうよう株主提案。最終的に東京スタイル側の多数派工作によって、村上ファンドは敗北するが、「企業は誰のものか」との問いを経営者に突きつけた。
昨年6月、金融庁と東京証券取引所は株主が保有する権利を適切に行使できるよう環境整備を促すなど、企業が守るべき指針を示した「コーポレートガバナンス・コード」を上場企業に課した。これまで株主利益を重視してこなかった日本企業の文化に転換を迫るもので、“もの言う株主”の発言が今後、ますます力を増すと見られている。
特に外資の力が急激に上がっている。最近では、大塚家具の経営権をめぐる父娘の委任状争奪戦で娘・久美子氏を支持して、父・勝久氏を会社から追い出したのも、米ブランデス・インベストメント・パートナーズという外資系ファンドだった。
さらに、外資に多い「議決権行使助言会社」も存在感を増しつつある。
2012年、助言会社大手の米ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)はオリンパスの臨時株主総会の場で、会長や社長らの選任議案に反対するよう株主に助言。
今年の総会では不正会計が問題視された東芝の新社長選任案に異議を唱え、経営陣の人事に直接口を出している。彼ら新時代の“もの言う株主”は、見方によってはかつての総会屋以上に企業が恐れる存在だ。
「企業財務に精通した彼らは、総会屋のように株主総会の日にだけ動くわけではありません。一年を通して経営陣に対し、企業財務などを分析したレポートを提出して、さらなる利益率の向上や増配など経営の効率化を求め続けているのです。
彼らは総会屋と違い、企業経営の透明化を図る上で、欠かせないチェック機能を果たしている」(経済ジャーナリストの松崎隆司氏)
※週刊ポスト2016年7月15日号