米共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は6月10日、バージニア州を訪れ、対抗馬の民主党のヒラリー・クリントン氏を「腐敗し切っている」「不正直だ」と舌鋒鋭く批判した。
なぜトランプ氏が初遊説の地に同州を選んだのか。そこには、大統領選を左右しかねないある中国人実業家の存在があった。ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。
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現在、米国では、「クリントン夫妻に最も近い知人」といわれるバージニア州のテリー・マコーリフ知事が、中国人実業家から違法な選挙資金の提供を受けた疑いで米連邦捜査局(FBI)と米司法省によって調べられている。
しかも、この中国人実業家は知事を介して、クリントン財団にも200万ドル(約2億4000万円)も寄付しており、外国人からの選挙資金の提供禁止という米国の法律に違反している可能性も浮上しているのだ。
この中国人実業家は中国東北部の遼寧省丹東市に本社を置くゼネコンを主体とする遼寧日林実業グループの王文良会長である。
王は日林建設や丹東港の開発を手掛ける丹東港集団、さらに米国などとの穀物輸入や食用油の製造販売、このほか造船会社などを手広く経営。同グループは2013年の中国企業トップ500に選出され、営業利益は246億元(約4000億円)と415位にランクインされている。
しかし、同グループが単なる民間企業ではないことは、王自身が日本の国会議員に当たる中国全国人民代表大会(全人代)委員を務めていることからも分かる。
これを裏付けるように、日林建設がこれまで請け負ったプロジェクトは中国共産党・政府の主要機関や要人の居住地が集中する中南海や人民大会堂、北京市の中心部に位置する天安門広場、世界遺産にも登録されている故宮博物院や頤和園の修理・修復作業などであり、官営企業としての色彩が強い。
これについて、北京の外交筋は「王は外相を務めた李肇星と親しいと言われているが、これほど多くの国家プロジェクトを手掛けているだけに、王のバックには元外相どころか、党政治局員、あるいは党政治局常務委員クラスの最高幹部がついていたとしても不思議ではない」と指摘する。
それでは、王とはどのような人物なのか。