七夕の日、どんな願いごとを短冊に書いたでしょうか──。38才パート勤務の女性Kさんは、息子が書いた短冊に胸が締めつけられたという。Kさんが告白する。
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4才の息子と2才の娘を連れ、夜逃げするように夫と別れたのは5年前のことです。酒に酔うと、私だけではなく、息子にまで手を上げるため、養育費もなしで、無理やり離婚しました。
専業主婦だった私にとって、シングルマザーの現実は厳しいものでした。パートは手取り12万円ほどで、生活をするのがやっと。食事も、ご飯にしょうゆをかけるだけの日々が続きました。
それでも息子は、「おいしいね」と、笑顔を見せてくれます。私は、そんな子供たちとの生活の中で、(父親なんていなくても大丈夫)と自信を持つようになりました。あの短冊を見るまでは──。
その年の夏、息子の保育園で、「欲しいもの、なりたいもの」を、七夕の短冊に書くことになりました。園の入り口に飾られた大きな笹には、「ゲーム」「じてんしゃ」など、かわいらしい願いごとが書かれた短冊がたくさん下げられていました。
息子の短冊を探すと、そこには「おとうさん」と書いてありました。あんな暴力男でも、子供にとっては唯一の父。貧しい暮らしに、さびしい思いまでさせてしまったと、私は離婚を後悔しました。
息子との帰り際、私は覚悟を決めて、「お父さんに会う?」と聞きました。すると息子は即座に「絶対にやだ!」と。だったら、あの短冊はなんだったのか。
理由を聞くと、「お母さんがいつも疲れているから、ぼくがお父さんになって、いっぱい働いて、お母さんに笑ってもらいたいの」と言うのです。
息子は欲しいものではなく“なりたいもの”を書いたのでした。思わず息子を抱きしめました。そんな心配をさせてしまう私は、母親失格です。
それからは笑顔を心がけるようになりました。すると、それまでよりも毎日が楽しい気がしてきたのです。息子に、大切なことを教えられた、忘れられない七夕になりました。
※女性セブン2016年7月21日号