国際情報

財閥トップの犯罪が頻発する韓国 それでも放免される理由

経営権巡る兄弟喧嘩に続き逮捕者まで出したロッテ創業家

 韓国第5位の財閥ロッテの創業者、重光武雄=韓国名・辛格浩氏(シンギョクホ・93)の長女、辛英子(ヨンジャ)ロッテ奨学財団理事長(73)をソウル地検が逮捕した。

 地元の報道などによると、ロッテ免税店を総括していた英子容疑者は、化粧品会社などの業者から出店の便宜を図るよう頼まれ、計約30億ウォン(約2億6000万円)を不正に受け取った疑いなどがある。

 3000億ウォン(約270億円)の背任と横領の疑いのかかる韓国ロッテには、6月10日にソウル中央地検特捜部が全捜査員の4分の1にあたる250人の捜査員を投入して、会社や役員の自宅など計17か所以上の家宅捜索が行われた。そして、事件に関係のある役員など20~30人が出国禁止処分となり、事件の真相に詳しいとみられている1人の役員は別件で逮捕された。

 ロッテホールディングス(以下ロッテHD)副会長で韓国ロッテの会長を務める重光昭夫氏は6月7日にメキシコで行われた世界スキー連盟のイベントに参加、14日には米ルイジアナ州のロッテケミカルの工場の竣工式、その後来日してロッテホールディングスの株主総会に出席し、7月3日に韓国に帰国。今後は事情聴取が行われるとみられている。

 ロッテHD元副会長で同社の筆頭株主「光潤社」(ロッテ創業家の資産管理会社)の重光宏之社長は、

「今回の逮捕は、創業者長女個人に対するものですが、韓国ロッテの主要事業や経営陣が関わる一連の疑惑に関連してなされたものであることから、一個人の刑事責任にとどまるものではなく、経営の透明性を向上させる必要性を強く感じています」(7月7日の光潤社のリリースより抜粋)とコメントしている。

 ロッテといえば、兄の重光宏之氏と弟の昭夫氏の兄弟対立に端を発して同族間で骨肉の争いが展開され、現在は昭夫氏が実権を握っている。こうした対立の中で宏之氏側の資料が検察に渡ったことがきっかけになっているのではという見方も一部で出ている。

「確かに宏之さんは会社に対して帳簿閲覧権などを行使して資料を集めていますが、仮に宏之さんの調査がきっかけだとしたら、もっと前にやっていたのではないでしょうか。むしろ韓国ロッテの中の現経営陣に反対するグループがリークしているのではないかといった話も出ているようです」(ロッテの内部事情に詳しい事情通)

 過去にも韓国では次々に財閥のトップが摘発されている。1997年にはサムソン電子の李健熙会長が全斗煥・盧泰愚両元大統領への贈賄事件で逮捕された。

 2008年には政界や法曹界に対する不正献金問題でサムスングループの本社が強制捜査を受け脱税が判明。李健熙会長は譲渡所得税456億円の脱税容疑で懲役3年執行猶予5年、罰金1100億ウォンの宣告を受けた。2009年にはソウル高等裁判所の判決により脱税、株式市場での違法行為、背任行為に対して有罪判決を受けている。

 現代自動車グループの鄭夢九会長は2006年、1380億ウォン(約167億円)を不正調達した横領と系列会社に4000億ウォンの損失を負わせた疑いで逮捕された。

 SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長は系列会社2社(SKテレコム、SK C&C) から497億ウォン(現在のレートで約41億円)を横領した罪で、2012年1月に在宅起訴。このほか2013年には韓国の食品系の中堅財閥、CJグループの李在賢(イ・ジェヒョン)会長が横領などの疑いで逮捕されている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン