和室に入って、襖を閉めるために畳に膝をつくとき、着物の裾が折れないようにさっと手で押さえる。襖の引手にはかならず両手を添えて、音を立てないようにそっと引く。
部屋に入って正座する際も、着物の裾に手をはわせ、軽く押さえながら、ゆっくり腰を落とす――さりげない動作だが、和服での立ちい振る舞いは意外に難しい。それを難なく、そして流れるように美しくこなしていると評判なのが、朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK)でヒロイン高畑充希(24才)の母役を演じている木村多江(45才)だ。
『とと姉ちゃん』は目下、絶好調。視聴率は13週連続で20%の大台超え。民放ドラマが軒並み10%を切る中、驚異的な数字を記録している。ドラマの舞台は昭和初期から高度経済成長期。その頃、まだ多くの女性にとって和装が一般的だった。
「夫に早くに先立たれ、3人の娘を育てる賢母という役柄の木村も、ドラマ中では一貫して和服です。着物姿や浴衣姿、未亡人になって仕出し屋で働き始めてからは割烹着姿も多い。いつも手を合わせ、少し内股気味に歩く所作に、品があって美しいのはもちろん、男性視聴者から“未亡人の割烹着姿が妙に色っぽい”とも話題になっています」(ドラマ関係者)
作中で映える木村の所作は、幼い頃から続けてきた「日本舞踊」に理由があるという。
「木村は生粋のお嬢様育ちで、小中高は都内の名門私立女子校で学んでいます。厳格なお父さんのすすめで、幼少の頃から日舞やバレエなど多くの習い事をやってきたそうです」(芸能関係者)
木村はかつてバラエティー番組で、日頃から日舞の動作を意識していると明かし、「日本舞踊とかの動きを技術として学んでいるので、こうやってちょっと髪を(結うために)上げる時に、さっとやったりとか…」と言いながら実際にふわりと首元で手をゆらして見せると、共演者から「素敵!」「色っぽい」と歓声が上がっていた。
「木村さんの所作には実は、市川染五郎さん(43才)との関係があるんです」と、歌舞伎関係者が言う。
「木村さんは日舞の中で『松本流』という流派の名取です。名取とは、師匠から“芸名を名乗ってよい”と認められた、技術の高い踊り手のことです。その松本流の家元が市川染五郎さんです」
木村は染五郎から直接指導されるわけではないが、縁が深いのだという。
「流派の発表会があれば2人はいつも顔を合わせますし、実は、木村さんの娘さんと染五郎さんの息子さんが同じ名門私立小学校に通っているので、“ママ・パパ友”でもあるんです。木村さんは染五郎さんの公演があるときは必ず観劇して楽屋にも顔を出していきますし、さまざまな場で染五郎さんの立ち振る舞いを参考にしているのではないでしょうか」(前出・歌舞伎関係者)
高麗屋ゆずりの所作であれば、美しいのもうなずける。
※女性セブン2016年7月21日号