7月7日は、七夕。織姫と彦星が年に1度の逢瀬を楽しむこの日…。さまざまな願いが重なり合う日でもあった。45才の会社員の女性は、七夕に亡き夫の思い出を噛みしめているという。
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学生結婚をした私たちは、子供にこそ恵まれませんでしたが、けんかひとつしたことのない夫婦でした。ですから、夫にスキルス胃がんが見つかり、手の施しようがないと医師に言われた時は耳を疑いました。
そして、半年の闘病生活の後、夫は亡くなりました。まだ37才でした。私は落ち込んで、家にこもりました。夫の看病に専念したいと、仕事も辞めていました。暗い部屋に閉じこもり、夫のところに行こうかと毎日考えていました。
そんなある日、家にカサブランカ、トルコキキョウ、ヒマワリの花束が届きました。それは夫が私の誕生日に毎年プレゼントしてくれていた組み合わせです。まさかと思いながら添えてあるカードを見ると、夫の字で、「誕生日おめでとう。今年は一緒に祝えなくてごめん。ぼくはきみの笑顔が好きなので、どうか笑っていてください」と書かれていました。そして、「また来年の誕生日にも手紙を送ります」と…。
毎日病室に面会に行っていたのに、いつの間に花束の手配をしていたのでしょう。来年の7月7日の誕生日に、また夫から手紙が届くと思うと、生きる希望が湧いてきました。私は再就職して、次の七夕を待ちました。そして待ちに待った7月7日、ドキドキしながらカードを開くと、そこには、お祝いの言葉の後に絶望的なひと言が。
「ぼくのことは忘れて、新しい家庭を築き、幸せになってほしい」と…。
そして、手紙はこれで最後であると書かれていました。最期まで私を思ってくれた夫を忘れることなど、できるはずがありません。弱いままの私では夫が心配する。
私は夫の手紙で、ひとりで強く生きて行くことを決めました。今でも七夕になると、夫が贈ってくれた花束を部屋に飾ります。そして、夫に愛された幸せをかみしめています。
※女性セブン2016年7月21日号