今年の株主総会シーズン最大のニュースは6月21日、ソフトバンクグループの総会前夜にいきなり発表された「ナンバー2の退場」だった。
孫正義・社長(58)の後継者と目されたニケシュ・アローラ・副社長(48)が突然の退任。アローラ氏は2014年9月、米グーグルの最高事業責任者から、孫氏が自らヘッドハントしてきた人物だっただけに衝撃が走った。このアローラ氏は、巨額な「報酬」でも注目されてきた経営者だ。
東京商工リサーチが6月末に発表した最新の「役員報酬ランキング」によると、1億円以上の役員報酬を受け取った役員は過去最多の414人。そのなかでアローラ氏の役員報酬は、過去最高額となる64億7800万円で2位以下を大きく離すトップだった。
米国に拠点を置くアローラ氏の羽振りのよさは周囲でも知られていた。在米の経済記者がいう。
「シリコンバレー周辺にある敷地約1万平方メートルの大豪邸に住んでいる。18億円の値がつく家ですが、賃貸で住んでいるようです。派手好きで知られ、洋服ダンスはデザイナーズスーツであふれていた。昨年、約600億円分のソフトバンク株を購入すると発表して話題になりましたが、退任後に売却したようです」
ほかにも「役員報酬ランキング」の上位には日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏(62)の10億7100万円、武田薬品工業社長のクリストフ・ウェバー氏(49)の9億500万円などの外国人経営者がズラリと並んだことが話題となった。トヨタ自動車初の外国人副社長であるディディエ・ルロワ氏(58)の報酬は6億9600万円で「ボス」である豊田章男・社長(60)の倍近い金額だ。企業の賃金体系に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
「日本人の感覚では“もらいすぎ”と感じるかもしれませんが、欧米では報酬こそが成功のステイタスであり、能力の評価です。
経済のグローバル化が進むなかで、優秀な“プロ経営者”を日本に招くには、欧米の同業他社に負けない高額報酬が必要になる」
日本人で目を引くのはソニーの平井一夫・社長兼CEO(55)の7億9400万円だ。
「元々ソニーは役員報酬が高い欧米型の“高額報酬体質”です。2005年にCEOに就任したハワード・ストリンガー氏によってそれが顕著になった。平井氏はゴーン氏らと同じくプロ経営者として扱われているということです」(『経済界』の関慎夫・編集局長)
※週刊ポスト2016年7月22・29日号