年初から右肩上がりで、6月には1トロイオンス(31.1グラム)=1300ドルを超えて推移している金相場。日本人はどのような投資戦略を持つべきか、金の動向に詳しい豊島逸夫氏が解説する。
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かねてより私は「ドル建て金価格は2020年までに1700ドルに達する」という長期見通しを立ててきた。いまもその見立てにまったく変わりはなく、今年はその長期上昇トレンドの1年目と見て間違いないだろう。
さて、私たち日本人にとって身近なのは円建て金価格である。4月から5月にかけて上昇が目立つドル建ての海外金価格に比べ、円建ての国内金価格はさほど上がっていない。いうまでもなく、その理由は円高にある。円高によって海外ほど国内金価格は上がっていないのである。
目下のところ、円は安全資産として買われているが、これは一過性のものと見た方がよいだろう。米国の利上げに伴い、日米の金利差が拡大すれば、ドル買い・円売りの動きが高まるのは必至であり、長期的には円安傾向になる、というのが私の見方だ。
そうなると、2020年に海外金価格が2000ドルに達し、控えめに見ても為替を1ドル=120円とした場合、国内金価格は1グラム当たり7000円を突破してもおかしくないのである。
だからといって「そこまで上昇が見込めるのなら、円高で安く抑えられているうちにまとめて金に投資しておこう」と考えるのは、あまりにも早計といえる。
投資戦略を考えるうえで、こんな「教訓」もお伝えしておきたい。
米国ではジョージ・ソロス氏の右腕と称される伝説のファンドマネージャー、ドラッケンミラー氏が金で大儲けする一方、一時は100トン近くも金を保有した著名なヘッジファンドのポールソンが昨年10~12月期、つまり金が上がる前に耐え切れず売却したことが明らかになっている。
かつてリーマン・ショックでも負けなかったとされる海千山千のヘッジファンドでさえ、短期売買で勝てない以上、下手な売買はすべきではない。それだけはぜひ頭に入れておいてほしい。
株にしろ、為替にしろ、そして金にしろ、たとえ長期上昇トレンドが見えても、上げ下げを繰り返しながら水準を切り上げていくものだ。一本調子でいつまでも上がり続ける相場など、どこにもない。
だからこそ、こと金投資においてはコツコツと「純金積立」をしておいて、長期保有することが鉄則なのだ。日頃はそうしておいて、この先、ある程度の相場観を持てるようになったら、「純金積立」にはまとまった資金で買い増すことができる「スポット購入」という方法もある。何事も焦らないことが、将来の大きな成果につながるはずだ。
※マネーポスト2016年夏号