7月8日に放送された『神の舌を持つ男』(TBS系)を皮切りに、夏ドラマがスタートした。今クールの注目は、出演者に二世タレントが多いことだ。中には親のように、演技力だけではなく大物感を醸し出している俳優もいる。注目の二世タレントとドラマの見どころについてテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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これほど二世俳優がそろったクールは記憶にありません。しかも、「近い将来、確実に主演を担うであろう」、スター候補ばかりです。なかでも再注目は、TBSの看板ドラマ枠・日曜劇場『仰げば尊し』に出演する真剣佑さん(まっけんゆう・19歳)と村上虹郎さん(むらかみにじろう・19歳)。
真剣佑さんは、世界的アクションスターの父・千葉真一さんが、「世界に通じる俳優」に育てるためロスで英才教育を施し、17歳でのハリウッドデビューを初出演初主演で飾った本格派です。今年はヒット映画『ちはやふる』で主要キャストに選ばれたほか、単発ドラマ『明日もきっと君に恋をする。』(フジテレビ系)ではドラマ初のメインキャストも務め、いよいよメジャーシーンに台頭してきました。甘いマスク、アクション、ネイティブ英語など多くの武器を持ち、今後が最も期待される10代俳優と言ってもいいでしょう。
一方、村上虹郎さんの両親は、村上淳さんとUAさん。まだ俳優歴は2年ですが、デビュー作『2つ目の窓』は主演を飾ったほか、カンヌ映画祭でも上映されました。大きな話題を集めたのは、昨年秋の特別ドラマ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(フジテレビ系)。主演のじんたん役を熱演して、原作アニメファンをうならせました。今年5月には映画『ディストラクション・ベイビーズ』で柳楽優弥さん、菅田将暉さん、池松壮亮さんら20代の演技派俳優と堂々渡り合う姿を披露。純粋さと危うさを併せ持つ佇まいは、まさに両親譲りで大物感たっぷりです。
2人が演じるのは、学校再建のために招へいされた吹奏楽部顧問に反発する不良高校生。69歳の名優・寺尾聰さんを相手に、10代らしい暴れっぷりと、汗と涙まじりの熱い演技を見せてくれるのではないでしょうか。
『仰げば尊し』には、中野英雄さんの二世・太賀さん(23歳)も出演します。前クールの『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)では、情緒不安定な“ゆとりモンスター”役で主役を食うほどの存在感を見せただけに、真剣さんや村上さんとの二世共演が楽しみです。
その他にも、『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)には、歌舞伎役者・中村錦之助さんの二世・中村隼人さん(22歳)が、サラリーマン小説家役で出演。歌舞伎界きっての若手イケメンだけに、トリンドル玲奈さんと水沢エレナさんとの三角関係が見物です。
また、『家売るオンナ』(日本テレビ系)には、プロ野球ソフトバンク監督・工藤公康さんの二世・工藤阿須加さん(24歳)が出演。北川景子さん演じるヒロイン・万智に振り回される若手営業マンを演じます。
柄本明さんの二世・柄本佑さん(29歳)は、『ヤッさん~築地発!おいしい事件簿~』(テレビ東京系)に出演。弟の柄本時生さん(26歳)も、『侠飯~おとこめし~』(テレビ東京系)に出演し、同作で高畑淳子さんの二世・高畑裕太さん(22歳)と共演します。
最後に1人、忘れてはいけないのが、『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系)に出演する松田優作さんの二世・松田龍平さん(33歳)。もはや二世であることを忘れるほどのトップ俳優ですが、タフで力強い演技が「ますます優作さんに似てきた」という声も多いだけに、ヒロイン・松嶋菜々子さんと真正面からぶつかり合うシーンが楽しみです。
松田さんを除いていずれも10~20代の若手ですが、素晴らしいのは両親の名前に頼ることなく、自らの演技で道を切り拓いていること。「父親譲りの」「母親に似た」ではなく、「親とは違う存在感を出そう」という意気込みが伝わってくるため、両親のファンだけでなく、多くの人々が応援したくなるものです。
ただ、「本人が意識していないところに、親の面影が出てしまう」姿も、視聴者にとっては醍醐味の1つ。親のことをよく知っている親戚のような立場から、彼らの躍動と成長を見守ってみてはいかがでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。