国内

戸塚宏氏が持論「体罰は相手を進歩させようとする行為」

スパルタ教育が物議を醸した 共同通信社

 いまや熱血指導という名の下でも、体罰は「絶対悪」の時代である。ただし一方の意見のみが「正義」とされる世の中は、何がしかの窮屈な思いを抱かせる。戸塚ヨットスクール校長で、指導中に生徒が死亡したことで非難を浴びた戸塚宏氏(75)は、今でも体罰肯定論者である。その意見に賛同することはできないが、現在の教育界の歪みを照射しているのも事実だ。ノンフィクションライターの中村計氏が訊いた。

 * * *
 悪いことをしたら、戸塚ヨットスクールに入れるぞ。

 1970年代から1980年代にかけ、そんな親の「脅し」が通用した時代があった。太平洋横断レースで優勝するなど世界的なヨットマンでもあった戸塚が、愛知県知多半島の小さな入江にヨットスクールを開校したのは、1976年のことである。

 戸塚ヨットスクールは転覆しやすいヨットを使って、体罰も辞さない超スパルタ教育で技術を教え込んだ。また、合宿所で集団生活をする中で甘えを削ぎ、当時、社会問題になっていた登校拒否になった子どもや家庭内暴力で手の付けられなくなった子どもを更生させ、世間の耳目を集めた。

 ところが70年代末から80年代初頭にかけ、訓練中の死亡事故が相次ぎ、1982年にはフェリーでの移動中に海に飛び込み脱出をはかった2名も命を失った。世間の目は賞賛から非難へと一変する。そして1983年、校長の戸塚を含むスタッフ13人は傷害致死の容疑で逮捕された。

 長期裁判の末、戸塚はスタッフの中ではもっとも重い懲役6年の実刑判決を受けた。2006年に出所した戸塚は、押しかけたメディアの前で「今も体罰は教育だと思いますか」と問われ、敢然と言い放った。

「体罰は教育です」

 この発言によって戸塚は、メディアから再び「悪」の刻印を押され、世間から葬り去られることになる。

──出所会見で、本音はどうであれ「思いません」と言ってしまった方が賢い選択だったとは思いませんか。

「だってね、体罰なしの教育でダメになって、うちで体罰を受けながら更生したヤツが大勢おるわけじゃん。そいつらに、どう言うの? 子どもが亡くなったのも、どう考えたって事故。こちらは、いいと思っとってやったんだから。体罰を否定したら、卒業生たちを裏切ることになっちゃうよ」

 その信念は今も微塵も揺らいでいない。2012年12月、大阪市立桜宮高校のバスケ部で、監督から体罰を受けた生徒が自殺した事件でも、マスコミにコメントを求められたら、体罰肯定論を堂々と語るつもりでいた。

「体罰反対で日本中が盛り上がったじゃん。ああいうときこそ、うちを出すべきやろ。なのに(マスコミが)ぜんぜん来ない」

──断ったわけではないんですね?

「違う。むしろ、出たがっとるのに」

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン