イケメン俳優がもてはやされた時代はもう古い!? ドラマや映画で存在感を発揮する個性派俳優に最近、あるトレンドがあるという。コラムニストのペリー荻野さんが指摘する。
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小栗旬身長184cm、東出昌大189cm、鈴木亮平186cm…阿部寛の登場にびっくりしていたのも今は昔。日本にもずいぶん長身の俳優が増えて当たり前のようになってきた。が、最近はU169cmの小柄にしてピリリと味のある面々の活躍が目立っている。
そのトップランナーといえるのが、濱田岳(身長160cm)。子役でデビューした後、『3年B組金八先生』でも注目を集め、キャリアは長い。昨年はドラマ『釣りバカ日誌』で二代目ハマちゃんになったり、『信長協奏曲』で小栗、藤木直人らイケメン揃いの戦国武将に囲まれつつも、お調子者の徳川家康でキラリと光った。家康は戦場から逃げ出すとき、脱糞したという説があり、ドラマの中でそのことをからかわれる場面もチラリ。神君、英雄と描かれることも多い家康なのに、このトホホエピソードを取り上げられるところに濱田家康の味が出ている。
一方、朝ドラ『とと姉ちゃん』で多くの視聴者におなじみの顔となったのが、浜野謙太(身長157.1cm)。ヒロイン常子(高畑充希)一家がしばらく世話になる仕出し屋森田屋の従業員・長谷川役だった。いつもでっかい顔の主のピエール瀧にガンガン怒鳴られている小柄な長谷川だが、後に森田屋のひとり娘富江(川栄李奈)と結婚。祝言の席で、常子姉妹は富江に「そもそもどうして長谷川さんを好きになったの?」と失礼きわまる質問をしたりする。
祝言では紋付き袴で酔っ払い、自分にそっくり(?)な福助人形を抱いて、へなへなしていた長谷川だが、浜野謙太自身は、へなへなどころかシャカシャカのミュージシャンなのである! 御存知の方は何を今さら「!」もないだろうというところだが、浜野謙太は自らのバンド「在日ファンク」のステージで、ぴょんぴょんと飛び跳ね、ダンスを見せ、ポーズを決める。ぴっちりしたスーツで動き回る浜野は、やけになで肩が目立った紋付きの長谷川とは別人みたいである。
そして、今年ぐいぐいと存在感を増しているのが、前野朋哉(身長168cm)。濱田岳が金太郎を演じているau「三太郎」CMで突如姿を現した一寸法師役の前野。実はいつも一寸法師はCM画面の隅っこに本当の一寸サイズでいたらしいのだが、それが誰なのかはわからず、auのイベントに三太郎らと出演した際にも乙姫の菜々緒から「知らないっつってんだろうが!!」とすごまれていた。
チャラチャラした一寸法師は人間サイズになってからよく目立っているが、前野本人には別の得意技がある。それは「何気なくそこに溶け込むこと」。今年は『重版出来!』のほのぼの漫画家、NHK『とっとテレビ』のフロアディレクターなど、「あー、こういう人いるわー」という雰囲気だった。思えば12年の映画『桐島、部活やめるってよ』でも、何気なく高校生役。その時、すでに26歳だったんだけどね…。今秋、スタートする市川海老蔵主演の『石川五右衛門』では、五右衛門の盗賊仲間を演じる。盗賊だけに昼間は「何気なくそこに溶け込み」、夜は存在感を現す。両方の技が出てくるはずだ。
三人に共通しているのは、既婚で父であること。浜野はふだんからこどもたちの朝ごはんを作っているという。まだまだこの三人の引き出しの奥は深い。二枚目でも悪役でも未成年でもOKだから、どこでどんな役で出てくるか予想できない。それがピリリ系の強みだ。