与党圧勝に終わった参議院議員選挙。戦後初めて、衆議院、参議院の両院で「改憲勢力」が3分の2を超えた歴史的な選挙となったことを、私たちはどれほど自覚しているのだろうか。選挙特番で安倍首相や与野党の党首らを鋭く追及したジャーナリストの池上彰さん(65才)が総括する。
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今回の参院選を一言で総括するなら、自民・公明が憲法改正の争点隠しに成功したということでしょう。対する野党勢力から見れば、それを争点化できなかったということ。
かつては選挙公示後でも、主要政党の党首を招いて、党首討論をテレビ各局でやりましたが、今は自民党が圧力をかけて、中立公平を気にしてばかり。9党の党首が出てきて平等に話しても面白いわけがありませんよね。争点が浮き彫りになりませんでした。
だから、今回の選挙で憲法改正の是非が問われていたという意識がある有権者は、案外少なかったのではないでしょうか。
実際、私はさまざまな場所で安倍首相の街頭演説を取材しましたが、そこで強調されるのは、アベノミクスの成果と民進党と共産党の共闘の批判ばかり。憲法改正の「け」の字も全く出てきませんでした。年頭の会見では「参院選でしっかりと訴えていく」と言っていたにもかかわらず、です。
自民党と連立内閣を組む公明党も、2014年の衆院選では重点政策に入れていた憲法の平和主義という言葉を外しました。
これでは、与党側は争点隠しをしたといわざるを得ないですよね。これについては直接、聞かなくてはならない。そう思って私は投開票日の番組に臨みました。
※女性セブン2016年7月28日号