4月の熊本地震のニュースを受けて、地震保険にまたスポットライトが当たっている。では、地震保険には入ったほうがよいのだろうか。経済アナリストの森永卓郎氏が解説する。
* * *
地震保険の保険料は、政府外郭団体の被害想定シミュレーションの元、所在地(都道府県ごと)により5段階で算出されており、地域間格差が非常に大きい。東京都や神奈川県、静岡県などが一番高く、保険金額1000万円当たり年間保険料は2万200円。近年地震に襲われた福島県や熊本県は一番安く6500円となっています。建物が「耐震」や「免震」の基準を満たす場合には、最大50%の割引制度があります。
だが、これまで地震が起こる可能性が低いといわれた熊本県で大きな地震が起きたように、どこで大地震が起きるかわからない以上、東京都や神奈川県の住民は不当に高い保険料を払わされていると考えることもできるでしょう。
また、火災保険では、地震が原因の火災被害や家財の損壊は補償されません。地震保険はそれを補完するため、火災保険に付帯する方式で作られたので、主契約となる火災保険とセットで契約することになります。
それでも、地震保険の保険金額は火災保険で支払われる保険金額の30~50%の範囲に制限され、なおかつ限度額は「建物5000万円」「家財1000万円」までと決められている。つまり、地震保険でカバーできるのは、最大で家屋の価値の50%。保険金だけで家は再建できないということです。
そう考えると、地震保険に加入する意味はないように思えるかもしれませんが、日本の住宅ローンは一般的に、もし地震などで家が全壊してしまっても、ローンが残ってしまう制度となっています。また、地震などの被害を受けた場合、被災者生活再建支援法により政府の外郭団体から支援金が出ますが、家が全壊し新築した場合でも最大300万円までしか支給されません。
そうしたことも勘案すると、あくまで保険料を払える余裕があることが前提ですが、特に住宅ローンの残高が多く残っている人などは、地震保険に入る選択肢はあるかもしれません。
もちろん、地震保険では家を建て替えるお金の半分しか賄えない以上、超節約術を駆使して流動資産などを貯める努力を欠かさないことも重要です。
※マネーポスト2016年夏号