ライフ

米の安楽死 自分らしく生きるため尊厳ある死を選ぶ傾向

どんな人が尊厳死を選ぶ?

 いま、世界では安楽死の容認が広がりつつある。オランダやスイス、ベルギー、アメリカなどが有名なところだ。2014年には、悪性脳腫瘍で余命6か月と診断されたアメリカ人女性のブリタニー・メイナードさん(29)が、予告安楽死をしたことが世界中で話題になった。

 彼女はSNSで、「私は死にたくはありません。ですが、私はもうすぐ死にます。だとしたら、自分の思う通りに死にたいのです」と綴った。最期の日には「本日は、私が尊厳をもって死ぬために選んだ日です。世界は美しいところです。さようなら、世界のみなさん」などとSNSに綴ったあと、家族に見守られながら致死薬を飲んで旅立った。

 日本でもこのニュースは衝撃をもって受け止められたが、彼女が自殺幇助のために引っ越したオレゴン州では1998年から2013年までの15年間で、1173人に致死薬が処方され、うち752人が服用して死亡している。

 では、どんな人々が安楽死を選んでいるのか。医療倫理学や死生学が専門の東京大学大学院人文社会系研究科の会田薫子特任准教授は現状をこう語る。

「オレゴン州の保健当局の報告によると、自殺幇助を選択したのは平均年齢71歳で、白人が97%、大卒以上が72%、がん患者が79%でした。自殺幇助を選んだ理由として経済的理由(医療費を心配)と答えた人は3%に過ぎません。つまり、自分らしく生きられなくなったから尊厳ある死を選ぶという人がほとんどです」

 医療費が払えないから安楽死するというのではなく、自らの尊厳を守るために安楽死を選んでいるのだという。

 現在の日本では、安楽死は法的に認められていないので、医師が関わると殺人罪や自殺幇助罪に問われる。尊厳死(消極的安楽死)は行なわれているが、延命治療の中止が法で認められているわけではない。

 日本尊厳死協会副理事長の鈴木裕也医師はこう解説する。

「尊厳死については2007年に厚労省がガイドラインを公表し、救急医療や集中治療の学会などもガイドラインを出して、医療現場の理解は広まっているが、法的根拠がなく、特に、一度開始した延命治療の中止については、やりたがらない医師が多い」

 欧米だけでなく、韓国、台湾でも、尊厳死が法制化されているのに比べて、日本は遅れている。超党派の議員連盟が2012年に尊厳死法案を作成し、公表したが、市民団体の反対などもあって、国会には一度も提出されていない。

 反対の理由は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病患者や重度の障害者などに、医療費削減のため、自殺を強要しかねないからだという。日本で安楽死が認められる時代はやってくるのか。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン