好調が続くNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』。舞台が戦後に変わり、これから小橋常子(高畑充希)が出版社を起こす姿が描かれていく。
常子が家族とともに創刊した『スタアの装ひ』という雑誌のタイトルでもわかるように、ドラマでは女性の「衣」がテーマの1つ。エキストラも含めて全員の衣装を担当しているのが、衣装デザイナーの黒澤和子さん(62才)だ。
黒澤さんは世界に名だたる映画監督・黒澤明氏の長女。『夢』『八月の狂詩曲』などの黒澤作品の他、北野武監督の『座頭市』や『アウトレイジ』など、多くの映画作品やドラマの衣装を担当してきた。NHKの朝ドラを担当するのは今回が初めてだ。
「私の仕事は監督やプロデューサーありき。衣装はその世界観を映像として表現していくうえでの縁の下の力持ちです。今回の仕事もいつもと同じスタンスで臨んでいます。ただ周囲の反応から、朝ドラって日本人にとって日常の一部であり、特別なものなんだなぁと実感しましたね。それに長いスパンを追いかける作品なので楽しくもあります」(黒澤さん。以下「」内同)
物語は戦前に始まり、舞台は静岡から東京へ。戦争下の暗い時代も描かれた。
「戦中から戦後にかけて3姉妹が着ているモンペは、子供の頃のシーンで着ていた着物と同じ生地を使っています。物もお金もない時代、多くの人が昔着ていたものをほどいて作っていたことを反映したものです」
母・君子は裁縫上手という設定。貧しいなかでも、手作り感のある衣装が印象的だ。
「朝ドラを見て家を出る人が多いですから、女性の衣装はかわいくてきれいなものにして明るい印象にしています。裁縫のシーンはないけれど、君子が娘たちにエプロンを作ってあげたりするだけでなく、娘たちも一緒になって“あれを作ろう”“これを作ろう”とやってきたと想像しながらやっています」
ちなみに常子が青、鞠子が赤、美子が赤とピンクの服をいつも着ているのは、「キャラクターをイメージし、全体のバランスを考えながら監督と相談してイメージカラーを決めました」とのことだ。
※女性セブン2016年7月28日号