都知事選に出馬した鳥越俊太郎氏への評価がネットとテレビで真逆のようだ。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察する。
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東京都くらいの人口規模になると、有名人でなければ知事選に勝つのは難しいとよく言われる。そして今回の都知事選では、顔と名前が知られている鳥越俊太郎氏が立候補し、民進、共産、社民、生活の野党4党が統一候補として推薦。鳥越氏に脚光が当たっていることは確かだ。
だが、その姿の見え方については、情報を主にテレビで得るか、ネットで得るかによって、まったく違うように思う。
ありがちなマスコミVSネットという対立図式でものを言うのは好きじゃない。でも、この件に限っては、実際に対立しているというか、2つの世界の空気の流れが正反対であることを、ひとまず確認しておきたいのだ。
ネットのほうは、圧倒的多数が鳥越氏を叩いている。少なくともツイッターとフェイスブックでは批判の嵐だ。
まず、12日の午後2時スタートの最初の記者会見からして評判最悪だった。「政策はまだ考えていない、ってナメてんのか」「民進党に出馬を要請されていた古賀茂明がまさかの乱入で固い握手とか、って酷い茶番」「他の候補の公約は関心がなかったから知らない、って準備不足の言い訳にもなっていない」という調子。
さらに、数字の間違いにネットの人々は呆れた。記者会見で鳥越氏は、東京都の出生率について〈ほかのところよりは高い〉〈1.4前後〉と触れたのだが、だいぶ時間が経ってから事務スタッフの指示で〈東京出生率は1.1なので、全国最低です〉と訂正。その間違いも「えっ?」だけれど、より問題視されたのは、氏自身の年齢の記憶についてだった。〈私は昭和15年の生まれです。終戦の時20歳でした〉とすらすら述べたことである。
終戦は昭和20年なので昭和15年生まれだと5歳。それを〈20歳でした〉と言ったまま、訂正もなし。ネットに驚きの声が相次いだ。「頭、大丈夫か?」「勘違いだとしても理解できない」。そして、そこから、一つの仮説がみるみる膨れ上がっていった。「ボケてるんじゃないか」「認知症の初期症状だろ」「はやく認知機能検査受けたほうがいいよ」。
この認知症説は、その後も衰える気配はない。13日の共同記者会見の際に、鳥越氏がボードに書いた公約の〈がん検診100%〉の文字がとても汚くて、「認知の検査絶対必要」の声が一層強まった。同日夜、『報道ステーション』出演時の表情がよれよれだったことからも、「うちのおじいちゃんがボケたときと同じだ」といった感想が方々からあがった。
ここで断り書きをしておくと、上記のネットの声や空気は、いわゆるネトウヨや保守系政党の支持者ではないと思われる「普通の人々」からも発せられていたものだ。「反日売国奴」とか「中国共産党の代弁者」とか「極左リベラル」とか言っているのは、ほとんど右寄りのスタンスを確定させている人々。比して、鳥越氏の「話の中身のなさ」や「老化」を指摘している人々は、右寄りもいるが、ノンポリから左寄りの層まで幅広く散っている。