北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が6月30日、中国共産党創建95年に当たり習近平総書記(国家主席)送った祝電のなかで、中朝両国間の「友誼」に触れたのは1回だけだった。5年前の中国共産党創建90周年の際の金正日党総書記の祝電では「朝中友誼」について3回も触れていたことから、金正恩体制に移行してから中朝関係が悪化していることが改めて明らかになった。
金委員長は祝電で「われわれは中国とともに、長い歴史を持つ朝中両国の友誼を新世紀の要求に合うよう発展させ、両国の社会主義建設を促し、北東アジア地域の平和と安全を守る用意がある」と表明した。
両国の友誼を強調することによって、関係改善に意欲的な姿勢を示す狙いがあったとみられるが、その割には祝電の中で両国の友誼について触れているのは、この1回のみだった。
90周年の2011年に金正日総書記が送った祝電は「朝中伝統の友誼は双方の共同の努力の下、新たな全盛期を迎え、両国の社会主義建設を大きく推進し、地域の平和と安定に非常に大きく貢献している。
朝中友誼は両党、両国および両国人民の共同のかけがいのない宝であり、絶えず揺るぎなく発展していく朝中友誼を維持していくことは朝鮮労働党の変わりない確固とした立場である」と述べられ、中朝間の友誼が3回も触れられている。
金委員長の祝電は金総書記のそれの最初の部分だけを繰り返したものであり、「朝中友誼はかけがいのない宝」であり「朝中友誼を維持していく」の部分が省かれている。このため、米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「多維新聞網」は、金総書記から金委員長に世代交代してから、「中朝両国関係はかなり悪化している」と分析している。
それを象徴するように、中国の習近平国家主席は6月1日、北京で、北朝鮮の李洙ヨン・朝鮮労働党副委員長と会談したが、その時間はわずか20分。通訳を入れると会談は正味10分間ほどで、両者はそれぞれの立場を述べ合うだけで、協議は決裂に終わったと伝えられる。
習氏は金正恩委員長が核開発と経済建設の推進という「並進路線」をとることに強い不快感を示し「中国の立場は一貫しており明確だ」と強調。北朝鮮が核兵器開発を止めなければ、「中朝両国の友誼の伝統は戻らない」と述べて、中朝首脳会談の実現による関係正常化は困難であるとの立場を明らかにしたという。