人間誰しも体の不調を治すために薬を飲んでいるのだろうが、日常的に服用している薬のなかには、かえって症状を悪化させるものもある。『断薬セラピー』などの著書がある薬剤師の宇多川久美子氏の話だ。
「高齢者の中には生活習慣病関連の薬を10種類以上、多剤併用している人が少なくありません。それらの多くはあくまで症状を一時的に抑えるだけで、病気を完治させるものではない。
また注意すべきは副作用です。例えば、降圧剤のアムロジピンやノルバスクなどを常用すると、めまいやふらつきを起こすことがあります。降圧剤の特徴として、血圧を下げるために血流不足が生じるのですが、効き過ぎると脳に酸素や血液が行かなくなるのです」
高齢者がめまいやふらつきに襲われると、転倒事故にがるケースが多く危険だ。転倒により、太ももや腰などを骨折して、寝たきり状態になってしまうケースも後を絶たない。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、死に至る重篤な病の引き金となりやすい。それゆえ、医師はあらゆる薬を処方するのだが、それらの中には注意が必要なものも含まれる。東海大学名誉教授の大櫛陽一氏がいう。
「高脂血症などの治療に用いられる抗コレステロール薬の中で、スタチン系と呼ばれるクレストールやリピトールは人間のエネルギーを作り出すミトコンドリアに障害を与える性質を持っています。結果、脂肪をエネルギーに使えなくなるため、糖質依存の体質になり、糖尿病に発展するケースが報告されています。最新の欧米の研究では、スタチン服用者は服用していない人に比べ、糖尿病の発症リスクが1.7倍に跳ね上がるとされています」
その糖尿病の薬についても注意すべき点がある。大氏によれば、糖尿病薬のうちアマリールやダオニールといったSU剤は、長期服用に慎重になったほうがよいという。
「SU剤を長期間、服用し続けると、インスリンの分泌を促すβ細胞が疲弊し、数が減少するケースが報告されています。そうなると体内でインスリンが分泌できなくなり、糖尿病の中で最も深刻なⅠ型糖尿病に近い状態となり、インスリン注射をしないと生きていけなくなる」(同前)
※週刊ポスト2016年7月22・29日号