企業のトップはどのぐらいの年収を得ているのか。本誌はその実態を知るべく東京商工リサーチの協力を得て、役員報酬1億円以上の社長、会長、代表取締役を対象に調査。2015年度(2015年4月期~2016年3月期決算)の有価証券報告書の公開データ(7月1日時点)を基に「役員報酬+株主配当」の額を算出し、ランキングを作成した。
トップは、ソフトバンクの孫正義・社長(58)で、年収は95億4500万円。2位はファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長(67)で82億8500万円となった。
その年収と各企業の現場社員の「平均年間給与」を比べてみよう。トヨタ自動車、武田薬品工業、富士フイルムホールディングスなど上位にランクインした大企業の社員平均を見ると、高給が目立つ。
なかでも一際目を引くのは、稲葉善治・会長兼CEO(67・22位の6億9100万円)を筆頭に50位以内に4人の経営陣がランクインしたファナックだ。
同社社員の平均年収は1571万円でランキングに登場する企業のなかで堂々の2位だ。『経済界』の関慎夫・編集局長が解説する。
「ファナックは一般的な知名度は高くないが、工作機械のNC(数値制御)装置で世界トップシェアを誇り、営業利益率4割かつ無借金経営という超優良企業。従業員の平均年収が他企業に比べて圧倒的に高いのも、高収益体質がなせる業です」
一方で社員平均年収とトップの年収の差が大きい企業も見受けられる。
寺田明彦・会長兼社長(80・32位の5億2800万円)のニチイ学館は平均年収341万円、寺田和正・社長(50・55位の3億7000万円)のサマンサタバサジャパンリミテッドは平均年収343万円。トップと社員平均の年収差は100倍以上ある。ヤマダ電機、アートネイチャーなども経営トップと従業員の年収差が大きい。
折しも世界の富裕層が節税対策としてタックス・ヘイブン(租税回避地)を利用する実態を暴いた「パナマ文書」が話題となり、日本でも“持てる者”への批判が高まっているが、欧米の実情は「桁違い」だと企業の賃金体系に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏は強調する。
「欧米では経営者と社員の年収差が500倍、1000倍というケースも珍しくありません。経済学者のトマ・ピケティ氏は“せめて100倍以内にしろ”と訴えている」
※週刊ポスト2016年7月22・29日号