「学校の成績に一見関係なさそうな、無駄な学びこそ重要」――「京大3兄弟」の長男で学習塾『探究学舎』講師の宝槻泰伸さんはそう言い切ります。
泰伸さんは、『とんでもオヤジの「学び革命」』(小学館)の原案協力者でもあります。同作は、3人の息子を塾も通わせずに京大に進学させた破天荒なオヤジ、翻弄される妻、そして個性豊かな3兄弟を描いた、爆笑あり、感動ありのコミックエッセイ。『女性セブン』の人気連載マンガ『ホーツキさんちのオヤジ』(2015年5月~11月)をまとめた単行本です。
子どもをやる気にさせ、将来、本当に役立つ知識を身につけさせるための、泰伸さんの授業が始まります。今回の質問はこちら。
「高校2年生の娘は勉強以外のことに興味がありません。地元でいちばんの進学校に在籍し、東大を目指すと言って頑張っています。ですが、勉強だけでは、自分で道を狭めているようで、親として不安です」(40代・主婦)
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受験マシーンのようになっているお子さんを心配する気持ちは、親として非常にわかります。勉強だけではなく深みのある教養を身につけてほしいという思いもあるでしょう。ただ、高2ということを考えれば、今の娘さんの状態は間違っていません。
大学は、将来の目的のために行く手段にしかすぎません。大学合格そのものが目的になってしまうことを「手段の目的化」といいます。これは、一般的によくないことといわれています。
ただ、うちのオヤジは、大学受験に関して「手段の目的化」は正しいと言っていました。受験期間は大学合格を目的にしたほうが努力しやすい。ある一定の期間内に努力を重ねる状態に自分を持っていくときには、頭の中が「手段の目的化」になっていたほうが集中しやすいのです。
例えば、起ち上げたばかりの企業があるとします。その企業は、企業理念を達成するために、お金を稼がなければなりません。この場合、企業理念が目的で、お金を稼ぐことは手段ですね。でも、最初の1、2年は稼ぐことに集中しなければ倒産してしまいます。
オヤジは「京大3兄弟」にいろいろな社会経験をさせましたが、京大受験のときは、勉強だけに集中させました。当時受験生だった三男・昌則を私が夏休みにキャンプに連れて行こうとしたら、オヤジは「絶対、昌則を連れて行くな。許さん!」と認めませんでした。
実際、東大や京大に受かるような子どもは、わき目もふらず一心不乱に勉強し続けます。私も受験の1年前からは、黙々と受験勉強に取り組みました。
だから、今回の相談の答えは、“見守ってください”ということです。受験が終わるまでは勉強に集中できる環境を作ってあげましょう。塾に行きたいと言ったら行かせてあげてください。
そして、無事受験が終わって、東大に合格したら、お母さんの出番です。胸の中にしまっておいた「娘と一緒にやりたいプラン」をどんどん実行に移して、娘さんにいろんなチャンスを運んであげてください。
うちのオヤジも、私が大学生になると、有名な作家に会わせてくれるなど社会経験を積ませてくれました。親が子どもにいろいろな経験の機会を与えてあげることは、少なくとも20才まではいいと思っています。
※女性セブン2016年7月28日号