「日本人の約7割は扁平足、約2割は甲高で、正常な足の人は1割しかいないといわれています。それなのに、日本人の多くは、足のトラブルをおろそかにしがち。痛みをがまんしたり、そもそも、気づいていない人も多い。
足自体に症状がなくても、姿勢が悪かったり、肩こり、腰痛がある人は、間違いなく足に不調を抱えているはずです」
そう警鐘を鳴らすのは、「足の診療所」院長の桑原靖さん。
足には左右合わせて56個の骨があり、これは全身の骨の4分の1にもなる。健康な足とは、これらの骨に、筋肉や靭帯などが組み合わさり、3つのゆるやかなアーチを作った状態をいう。このアーチが、歩く時の衝撃を吸収してくれるのだ。
外反母趾や巻き爪、足裏の痛みなどはほとんど、このアーチの不調が原因だと、桑原さんは言う。アーチが歪み、丸みが保たれないと、歩く時の衝撃を吸収できず、足の別の部分に余計な力がかかってしまうのだ。
「アーチを支えているのは足裏の筋肉です。若いうちは筋力がある上、ひざ関節や股関節がクッションになり、アーチへの負担を減らしていました。しかし、年を重ねると筋力が弱くなり、関節も硬くなるため、アーチが体重や衝撃に耐えられなくなってしまうのです」(桑原さん)
特に女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、足のアーチが崩れやすい。さらに、出産経験のある女性の場合、妊娠中のホルモンバランスも大きく影響しているという。
「出産時に産道を作るため、リラキシンという靭帯をゆるませるホルモンが分泌されます。リラキシンは全身の靭帯に作用するため、足の靭帯もゆるめてしまい、足の骨の歪みを招くのです」(桑原さん)
子供が手を離れた40~50代になり、ふと気づけば、足の指が曲がっていた、扁平足で足裏が痛いなどと、病院に駆け込む患者が多いという。
「足は体の土台であり、家でいう基礎にあたります。この土台が歪むと、上半身にも不調が生じます。足の歪みから体のバランスが取りにくくなり、転倒して骨折。寝たきりになるケースも。そうならないために、まだ体を自由に動かせる40代からのケアが大切なのです」(桑原さん)
かかとを汚く見せる、ガサガサの原因も、実はこのアーチの崩れにあるとは、足裏コンシェルジュの宮地裕子さん。
「かかとのガサガサの原因は乾燥だと思われがちですが、実は代謝の悪さが関係しています。特に夏は冷房で足元が冷えて代謝が落ちやすい。歩く時、足の指先までしっかり踏み込めれば、インナーマッスルが刺激され、代謝も上がりますが、アーチが崩れるとそれができず、悪循環になります」(宮地さん)
※女性セブン2016年7月28日号