コラム

お金がないことは本当に不幸なのか? あらためて考える

お金がないことは本当に不幸なことなのか?

 金融資産をほとんど持たない「下流老人」が急増している。「家計の見直し相談センター」の藤川太氏によると、下流老人への転落を避けるためには、現役時代から家計の見直しを進め、これまで「聖域」とされてきた子供の教育費などについてもあらためて考える必要があるという。そうした場合、どれだけ家計が改善するのか。藤川氏が実例をもとに解説する。

 * * *
 これまでなかなか手をつけてこられなかった部分にまで踏み込むことで家計を抜本的に見直すことができ、それが老後の安心にもつながっていきます。

 実際、私のところに相談にきた50代前半の会社員・Aさんも最近、家計の構造改革に成功した一人です。

 Aさんはまず住宅ローンを借り換えて、月々の返済額を1万7000円ほど減らしました。保険の見直しはすでに行なっていたので、自動車を手放すことにしました。月に何度かは車での移動が必要になるのですが、それをタクシーに切り替えて月2万5000円ほどの節約につなげました。ほかにも通信費は料金プランの見直しで月3000円、生活費も月5000円ほどカットすることなどによって、合わせて月5万円の節約となり、浮いた分を貯蓄に回せるようになったのです。

 いまやAさんは「家計を見直して、老後も少ない生活費で暮らせる自信がつきました」とまで語っています。たとえいまは大きな貯蓄がなくても、Aさんのようにやり方ひとつで老後の不安を解消することは可能なのです。

 Aさんのケースからも明らかなように、老後不安の少ない人は、家計のダウンサイジングに成功したり、自分で稼ぐなどしてあらかじめ老後資金の手当てができている人たちといえます。

 サラリーマンなら大っぴらに副業で稼ぐのは難しいとしても、家計の見直しで捻出できた手元資金を運用に回して殖やすことも十分可能です。

 そしてもうひとつ重要なのは、お金に対する価値観を考え直してみることです。そもそもお金がないことが本当に不幸なのか、自ら問い直してみるといいかもしれません。

 たとえば、いまの日本の20代について考えてみましょう。バブル崩壊後に生まれ、車を持たないなど贅沢しない生活が当たり前となっています。彼らは自分たちが不幸だとはいわれたくないでしょうし、おそらくこの先、年金が少なくても時代に合わせた生活を送れるでしょう。あるいは、北欧諸国では税金や社会保障費を合わせた国民負担率が圧倒的に高く、実際に使えるお金が少ないにもかかわらず、幸福度の高さは世界屈指とされています。

 現役時代に支出を抑えて暮らしているからといって、下流でもなければ「負け組」でもない。それどころか将来を見据えれば「勝ち組」といえるかもしれません。物質的に豊かな暮らしから堅実な暮らしへと、前向きに切り替えることができれば、将来の不安はグンと減ります。

 お金に対する価値観を変えることによってライフスタイルも気持ちも大きく変化させることが可能です。それこそが老後の下流転落から救ってくれるなによりの処方箋かもしれません。

※マネーポスト2016年夏号

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン