投資で1億円超えを達成した人を、いつからか「億り人」と呼ぶようになった。ハンドルネーム「かぶ1000」さん(40代・投資歴28年)もその一人。かぶ1000さんが、自身の投資遍歴を振り返る。
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私が中学2年のとき、社会の授業で経済を勉強したことでブラックマンデー(※)を知り、投資に興味を持つようになりました。ちょうどその頃、郵便局に預けていた定期貯金が満期になって40万円が戻ってきました。父と祖父から「株をやってみろ。面白いぞ」との助言を受け、株式投資を始めたんです。
【※ブラックマンデー/1987年10月19日月曜日、NY市場で起こった過去最大規模の大暴落。NYダウは1日で22%超下落し、世界同時株安を招いた】
初めて買ったのは、大手の自動車や海運でした。タイミングよく、40万円が500万円くらいになって、「すごい! こんな儲かっていいの?」と驚いたものです。
高校時代は『会社四季報』を片時も離さず、ラジオたんぱで市況情報を聞きながら、2年生の時に1500万円まで殖やしました。
そして高校卒業を迎え、「もっと株式投資がわかるように、財務や会計を勉強したい」と思い会計の専門学校に進学しました。私の今の投資手法は、資産面での割安性に注目したバリュー投資で、会計専門学校に行ったことがその原点になっています。
それと、1996年頃から商品券やテレカ、プリペイドカードなどを安く買って、高く転売する小銭稼ぎも始めました。今も節約志向があるのですが、その土台はこの頃につくられましたね。
そして1998年に、ウォーレン・バフェットの師で“バリュー投資の父”と呼ばれるベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』と『証券分析』という名著に出会ったんです。このなかでグレアムは、「ネットネット株」への投資を提唱していました。ネットネット株とは、正味流動資産から総負債を差し引いた金額が時価総額を上回っている割安な銘柄。PBR(株価純資産倍率)の概念を、さらに厳格化して銘柄選別をするような感じです。そこに自分流のアレンジを加えて、独自のネットネット株を発掘しています。
ITバブルの頃、バリュー株はそれほど上がらず、「もう古い考えの投資法なのかな?」と疑ったりしましたが、バブル崩壊の最中でも上がっていった。このとき「バリュー投資は派手さはないけど、手堅くていい手法なんだ」と確信しました。
それからバリュー投資にこだわり続けて、2011年に資産1億円、アベノミクスが始まっていた2013年に2億円、現在は2億5000万円になっています。
株の投資歴は28年で、四半世紀を超えていますが、この間、「続けることの大切さ」を学びました。
たしかに相場やパフォーマンスが悪いときは、自分の口座を見たくなくなってしまいがちですが、それでは成長できません。うまくいっているときは、むしろ放っておけばいい。そうじゃないときこそ、どう向き合えば生き残るのかを、真剣に模索することが大切だと思います。
棋士の羽生善治さんが「才能とは、情熱や努力を継続できる力」と語っていましたが、まさに「継続は力なり」です。「続けること」でわかることがたくさんあります。だからこそ、若いうちに投資を始め、なるべく多くの失敗を経験することで自分も成長できると思います。
※マネーポスト2016年夏号