中国では50を超える都市で地盤沈下が進んでおり、北京市では毎年11cm以上、上海市でも20cm、古都・西安市でも20cmを超えるなど、華北平原や長江デルタ地区、渭水盆地などが特に深刻。このままでは、10年後には消滅する都市もあると予想される。
特に、上海は1921年から1965年の間に1m70cmも地盤沈下が進んでおり、蘇州市の河川水面よりも低い。当時、適切な対応が取られていなければ、2000年の段階で上海市は海の底だったと専門家は指摘している。
これは中国を拠点とする国際調査団が調査結果を発表したもので、衛星画像やGPS(全地球測位システム)のデータを解析し、2003~2010年にかけての地理的動向を調べた。その結果、地盤沈下の最大の原因は地下水の汲み上げ過ぎで、すでに地下水は枯渇状態にあるという。
報告によると、北京は「水需給の逼迫が懸念される『水ストレス』の最も深刻な水の都市の1つ」で、1935年以降、地盤沈下の被害が確認されているという。
北京地区の地盤沈下には地域でばらつきがあり、高層ホテルやオフィスが集中する朝陽、昌平、順義と通州地区は、最もひどく沈下がひどいことが確認されており、「鉄道や道路の交通インフラ、都市基盤の安全性にとって、大きな脅威になっている」と研究者は調査レポートに報告している。
上海市では1966年から地下水の汲み上げ制限を開始し、同時に、夏季に利用した地下水と同量の水を、冬季に人工的に地下水脈に戻す試みも実施されている。しかし、ここ数年間は高層ビルの建設ラッシュが続いたことから、地盤そのものがビルの重さで沈んでいくという深刻な現象がみられ、大きなビルの周りには地盤に亀裂が走っている現象がところどころで見られているほどだ。
このまま悪化を続ければ、2050年には上海を中心とする長江デルタ地区は海の底に沈む──との予測データも出ているという。
一方、西安市などの渭水盆地では地下水の過剰な採取により、毎年7cm以上地盤沈下が進み、この結果、地面のひび割れで橋脚にも深刻なダメージが現れていると報告されている。
中国メディアによると、中国50の都市で、地盤沈下により橋や排水設備、ガスパイプライン、建物の損壊が発生しているという。