治療を何度も繰り返して、挙げ句の果てに抜歯を宣告される──歯科治療のタブーは数多いが、治療によるリスクは様々だ。これまでの治療を見直し、対応策を講じられるかで、歯の寿命も、あなたの健康状態も大きく変わる。人口20万人弱の地方都市に住む初老の男性がいう。
「口の中の金属の影響が、まさか手や顔に出るとは思いませんでした。皮膚科の医師も知らないようです」
彼は2004年、歯科クリニックで左下の歯にブリッジを装着する治療を受けたが、手の平にプツプツと小さな膿疱ができて、痒みで眠れない状態になった。
皮膚科ではステロイド剤等を処方されたが改善せず。インターネットで必死に自分と同じ症状を探すと、歯科金属アレルギーの可能性があることを知った。
そして別の歯科クリニックを訪ねると、歯科金属アレルギーによる掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と診断された。
基本的な治療は、原因物質の除去である。男性はまず、左下のブリッジを撤去。翌月以降、右側上下にもあったブリッジと、1本の差し歯を外してメタルフリーになった。すると症状は大きく改善に向かい、約1年後にはほぼ完治するに至った。
歯科金属によるアレルギー治療を目的にした患者が全国から訪れる、横浜の中川駅前歯科クリニック。全身が赤く爛れた50代男性は、皮膚科での治療で改善が見られず、銀歯を調べてほしいとやってきた。
「意外に思われるかもしれませんが、アレルギーの症状は口の中に出るケースは少なく、全身や顔、手足に湿疹やアトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症が現われます。だから原因が歯科金属だと思わずに苦労した末に、効果の疑わしい民間療法にひっかかってしまう人もいます」(同クリニック・二宮威重院長)