国民に大きな衝撃を与えた天皇陛下の「生前退位」報道は、皇室を研究してきた識者らにとっても激震だった。仮に生前退位が実現の運びとなっても次々と課題が浮かび上がる。現行の皇室典範では天皇の直系男子しか皇太子になれないため皇太子が不在になるという問題や、結婚適齢期を迎えられる眞子さま佳子さまのために女性宮家をつくらなくていいのか、天皇の直系にあたる愛子さまはどんなお立場になるのか、といったさまざまな問題を同時に考えざるをえない。
『天皇論』(小学館)を著わした漫画家・小林よしのり氏と『皇室典範と女性宮家』(勉誠出版)などの著書がある法学者・所功氏が対談した。
小林:皇太子殿下に後を継いでもらって、どのような象徴天皇の像を築いていくのかを皇后陛下とお二人で温かく見守りたい。そう思われるのは全く自然じゃないですか。そうしてあげられるようにしようというのが国民の感謝の念のはずですよ。この期に及んでもそれに反対する人がいるのは理解しがたい。
所:ご公務が多すぎるという問題にしても、陛下が本来なさるべきことと、してほしいとの要望を受けてされることの区別がつかなくなり、両陛下のハードスケジュールが当たり前になってしまった。
国民みんなが陛下に甘えてきたのではないか。そのことも反省しなければなりませんね。
小林:すべての問題が繋がってきますからね。先ほども言ったように、皇太子殿下が天皇になると、皇太子が不在になる。では、秋篠宮殿下が「皇太弟」となるよう皇室典範を改めるのか。しかし、お二人がどんどんご高齢になっていくと、たとえば秋篠宮殿下への皇位継承が80歳を超えることもあり得る。すると、新元号の期間が数年しかないという大混乱も起きかねない。悠仁さまは、もっとも重要な皇室祭祀をはじめとする皇位継承のための準備期間がほとんどないまま皇位を継ぐことになってしまう。
皇太子殿下が継ぐのだから、そのあとは直系の子である愛子さまが継ぐのが一番自然だと思います。男系絶対という古い風習にとらわれるべきではない。