今後考えられる在日米軍の縮小・撤退は、日本を安全保障上の危機に晒すことになる。日本国内の米軍撤退を主張するドナルド・トランプ氏が米大統領になるか否かにかかわらず、日本における米軍の力が減じていくのは避けられないだろう。ならば、どう自力で国を守るかを考える必要がある。制約が多い自衛隊ではなく、国際的に見てもスタンダードな国防軍の創設を想定したとき、その両者の違いとは何になるのか。
今年3月に施行された安保関連法により、「国民の命」と「平和な暮らし」が守られると安倍首相は強調する。賛否両論はあるが、確実なのは「“安保法で国防は万全”とは言えない」ということだ。
米軍の力が縮減するなか、自力で国を守る防衛力の再構築が日本の課題となる。その際には憲法改正が大きな議論となろうが、その先にどんな姿が考えられるだろうか。
自民党は2012年4月に決定した憲法改正草案の9条2項で、「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」と明記した。評論家の潮匡人氏がこの国防軍の姿を予測する。
「自民党案はまず憲法を改正し、自衛隊が『軍』を名乗ることが主眼で、国防軍の詳細なイメージは持っていないでしょう。それでも、基本的な人員・規模は自衛隊と同程度でありながら、米軍のように独立した海兵隊を創設し、海外での邦人救出や島嶼防衛に活用する青写真が見えてきます」
自衛隊と通常の軍隊である国防軍はどこが違うのだろうか。大きく異なるのは、ROEと呼ばれる軍の「部隊行動基準」だ。海外のスタンダードな軍隊は“できないこと”を列挙する「ネガティブリスト」で規定される。
「禁止規定に抵触さえしなければ、軍は自由に作戦行動や武器使用ができ、有事に即して柔軟な対応ができます。例えば米軍は空母が攻撃されればネガティブリストに基づき、艦長の判断で一定の防護措置が取れる。世界の潮流に従い、国防軍のROEはネガティブリストになるでしょう」(潮氏)
一方で自衛隊は、行使できる権限だけを並べた「ポジティブリスト」方式だ。