広島ファンにとっても、新井貴浩(39)の大爆発は予想外だった。「これは『神ってる』どころじゃない。もはや新井サンは『神』そのもの」(40代ファン)という声まで上がる。
7月の新井サンの打撃成績は、打率5割2分6厘、7本塁打、20打点(7月19日終了時点)でセ・リーグ3冠。後半戦スタートとなる18日の中日戦では劇的なサヨナラホームランを放ち勝負強さを見せた。
「7月だけなら全ての面でヤクルト・山田哲人より上」(同前)とファンは興奮しきりだ。
でも、新井サンは本来こんな「カッコいい選手」じゃなかった。
広島から阪神へFA宣言した際の会見で、自ら選んだ道であるにもかかわらず「辛いです……」と言ったことから、ついたニックネームは「辛いサン」。阪神移籍後は、エラーやボーンヘッドも連発。ヘッドスライディングすれば手がベースまで届かずにスタンドから失笑を浴び、好機でゲッツーを連発しすぎて「ツラゲ」(辛いサンのゲッツー)という言葉まで生まれたほど。
阪神時代の2011年には、打点王獲得と同時に失策王・併殺王にも輝き、当時の先輩・金本知憲に「祝三冠王Tシャツ」で祝福されるという屈辱(?)も味わった。阪神を自由契約になり、いわば「花道」のために古巣・広島に戻ってきた感のあった新井サン。
「ファンの間では、“ロウソクの炎が消える前の最後の輝きじゃないの”という声もある。でも僕は新井サンが不惑を前についに覚醒したんだと思いたい。絶好調のチームとともにこのまま三冠王まで突っ走ってほしい」(50代ファン)
広島ファンが盛り上がる一方、憮然としているのが阪神ファンだ。熱烈な虎党である経営評論家・江坂彰氏がいう。
「ウチにいたときは三振とゲッツーばっかりやった男が、広島に戻ったらこの活躍や。阪神ファンは怒りますよ。なんで阪神にいるときにもっと打ってくれんかったんや。おまけに、ポロポロしていた守備までマトモになっとるから腹が立つ(笑い)。
まァ、彼は褒められて伸びるタイプなんやろうね。“イジって伸ばす”阪神とは合わんかったんかもね。せめて仁義として、阪神戦だけではおとなしくしておいてほしいもんや」
実は「お祭り男」だった新井サン。この勢いはシーズン終盤まで続くのか。
撮影■山崎力夫
※週刊ポスト2016年8月5日号