甲子園制覇7回、春夏通算96勝を誇るPL学園野球部が“廃部”に追い込まれた。12人の3年生の中に、かつて当たり前だった特待生はいない。いわば普通の高校生である彼らはこの1年、「超強豪校の最後の部員」の看板を背負う重圧と戦い続けてきた。
PLに起きた異変を2年にわたって追いかけてきたノンフィクションライター・柳川悠二氏が、「最後の夏」が終わった日の様子をレポート。PLは2015年度からの部員募集停止を2014年に発表し、2016年夏の「休部」が既定路線となった。そして、この夏の大会で、初戦を7-6で落とし、「PL野球部最後の夏」は幕を閉じた(文中敬称略)。
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夏の大阪大会初戦(対・東大阪大柏原)の前日、セカンドの河野友哉と、控え外野手の正垣静玖(しずく)がフライを追って激突。河野が左足大腿骨の骨折、正垣が左肩亜脱臼という大けがを負ってしまう。試合に出られるのは9人ギリギリとなった。
PLは初回に2点を先制。しかし立ち上がりに不安を抱える先発のエース・藤村哲平の制球が定まらず、すぐに同点に追いつかれてしまう。2回裏、走者をためたところで主将・梅田翔大にスイッチ。3点の勝ち越しを許したが、その後は好投が続いた。春からの試行錯誤が、実を結んでいた。
4対5で迎えた7回表。藤村がバットで借りを返した。レフトに2点本塁打をたたき込み、6対5と試合をひっくり返したのだ。春先までは、先制してもいつの間にか勝ち越しを許している「逆転されるPL」だった62期生が、土壇場で往年の「逆転のPL」を再現してみせた。
スタンドも沸き立った。しかし、8回に再び逆転を許し、12人の夏は終わった。