国民に大きな衝撃を与えた天皇陛下の「生前退位」報道は、皇室を研究してきた識者らにとっても激震だった。改めて皇室典範の改正問題が浮上したわけだが、過去、改正論議は小泉政権や野田政権、その後の安倍政権でも引き継がれたものの実現しなかった。この改正議論には安倍首相も関与している。『天皇論』を著わした漫画家・小林よしのり氏と『皇室典範と女性宮家』などの著書がある法学者・所功氏がこの問題を話し合った。
所:やっぱり今の安倍首相には責任があると思います。過去2回の経験を踏まえれば、問題点をしっかりとご存じのはず。
あの経験から学んだことは、有識者会議で賛否両論を聞いたり、無記名のパブリックコメントを募っても、ネット上の極論がばーっと出たりして収拾がつかなくなる恐れが強いということです。
小林:確かにそう。あれはひどかった。
所:そこで今後一番よいと思われるのは皇室会議に諮ることです。
この常設の会議は、皇族から2名、首相と宮内庁長官という行政府から2人、最高裁長官を含む司法府から2人、さらにあとの4人が立法府の衆参両院から正副議長です。両院とも議長は与党、副議長は野党から出すのが基本ですから、皇族と国民を代表するさまざまな意向を投影することができる。
この議長は首相ですから、皇室会議で議論し一つにまとめた考えを政府に提案するというプロセスを踏めば、国会の審議で合意が得られやすいと思われます。