1980年のデビューから36年間、休むことなくアルバムとシングルを発表し続けている松田聖子(54才)。通算50枚目のアルバム『Shining Star』を引っさげてのツアーも大好評だ。
36年にもわたって、芸能界で圧倒的な存在感を発揮し続ける聖子だが、その肩書は変化している。
聖子と同世代、同じ福岡県出身の黒木瞳(55才)は、宝塚から女優へ、そして映画監督になった。聖子と同じ年にデビューした真矢ミキ(52才)は、昨年から朝の情報番組の司会を務めている。もっと下の世代でも押切もえ(36才)は、モデルから小説家へ、今井絵理子(32才)は歌手から政治家への転身が注目を浴びた。いまなお聖子のコンサートに足を運んでいる女装家のミッツ・マングローブ(41才)は、そういった肩書を増やしたり、消したり、軌道修正をし続ける人が多い芸能界で、聖子こそ「先駆者」と指摘する。
「芸能人の場合、わが身が商品ですから、飽きられてしまわないよう、随所随所でニュース性を際立たせることが必要になりますよね。たとえば結婚、出産、離婚、子育て、子供のデビュー、再婚、闘病、復帰、政界進出…など、今はたくさんフックがあります。
聖子さんは、アイドルに母親という肩書をプラスさせ、両立させた最初の人なんじゃないでしょうか。年齢を重ねて女性としてのスタンスが変わることはもちろん、私生活のスキャンダルでさえも、最終的に自分の糧にしてきた。松田聖子の売りとなったんです。すごい“ビジネスマン”ですよ」
作家の朝倉かすみさん(55才)が聖子を「バケモノ」という大きな理由はここにある。
「これまで彼女にダメージを与えるようなゴシップもあったのに、彼女は一切釈明しない。今は不倫だなんだで、世間が叩けば、みんなお行儀よくしなきゃってなるのに、この人は違う。ダメージを受けていると思うけど、顔には出さないんです。そして“本当の私はこうなのよ”と、気持ちの悪い告白をしないんですよね。それでいて、いつまでも華奢で柔らかそうな雰囲気を保っている。例えば仕事ができて年を取った女性って、強さのあまり怖い感じがあるのに、そういうところが全くないでしょ。聖子さんの、あの明るさってなんだろうってよく思うんです」
聖子のことは好きでも嫌いでもなく、特別視さえしていない人もいる。作家・あさのあつこさん(61才)はこう話す。
「私は聖子さんより少し年上ですが、彼女がデビューしたとき、すごいと思ったのは覚えています。でも、彼女は案外自分の人生を普通に生きているだけなのかもしれないと思うんです。私の周りにも、無名でもすごい人はたくさんいます。フルタイムで働いて、農家仕事もして、子供も育てて、お姑さんの世話もして、地域の活動にも参加する。そして自分の生き方に自信を持っているような人が。
そういう人は、運でも、才能でも、野心でも、天から与えられたものをフルに活用しているように思います。もっといえば、私たちだって、聖子さんのように生きたいと思えば生きられるんじゃないかなと思うんです」
その思いは、一度は東京の大学に進学するも、地元・岡山で就職し、結婚・出産を経て作家デビューを果たしたあさのさん自身の経験と無縁ではないだろう。
ただ聖子のように生きるのはすごく難しい。繰り返しになるが、聖子の最大の強みのひとつは、ブレない生き方といえるからだ。