ライフ

絶滅危機のうなぎは「高嶺に返すべき花」なのだ

魚のすり身から作った「なんちゃって鰻丼」。なかなか面白い味

 うなぎ絶滅の危機が指摘されている。背景にあるのは日本人の消費量が増えていることは間違いない。いつから日本人はうなぎを「常食」するようになったのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 土用に突入した7月下旬、例年通りにスーパーの店頭には「うなぎ」の文字が踊っている。だが、今年は少しだけ趣が変わってきた。「うなぎ」以外の素材──豚、鶏、サンマ、かまぼこといった、変わった素材の蒲焼きが増えているのだ。これは「土用の丑の日のうなぎ」という食文化の崩壊か、はたまた新しい食文化を開く扉なのか──。ことここに至る状況を整理してみたい。

 端緒になっているのは、この数年囁かれている「うなぎ絶滅」問題だろう。この数十年でうなぎの採捕量は激減した。環境の変動や悪化も理由として挙げられるが、何よりも養殖用のシラスウナギの乱獲が大きな理由という見方が強い。

 広く知られているように、うなぎが人気になったのは江戸時代のこと。夏場のスタミナ食として、平賀源内が広めたという説が知られている。もっとも当時の丑の日には「う」のつくうどんや梅干しを食べるという習慣もあり、いまほど「うなぎ」一色ではなかったと言われている。ちなみに18世紀中ごろの蒲焼きの値段は200文。当時のそばを1杯16文として現在の価格に換算すると4000~6000円といったところ。現代における高級店の価格並だ。

 明治時代に入ると、浜名湖を中心に養鰻が本格化し、大正、昭和にかけて漁獲量は増えた。幼魚であるシラスウナギも不足するようになり、国内外からかき集められるようになった。だがその当時もあくまでうなぎは高嶺の花であり、大衆にとって日常から手が届くようなものではなかった。

 状況が変わったのは戦後のことだ。高度成長期にうなぎの消費量が増えた結果、バブル期に中国や台湾から蒲焼きの完成品を輸入するようになった。すると全体の価格が大きく下落し、庶民の食卓に上るように。消費量は爆発的に伸び、「安い(イマイチな)うなぎを、おいしく食べる方法」などの企画がテレビや雑誌などのメディアをにぎわせた。安いうなぎでも、職人の味を知らない人々にとってはありがたみがあった。だが、それは「串打ち三年、割き八年、焼き一生」と言われる、職人の味とは別物だった。

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン