リオ五輪で女子マラソン中継(TBS系)の解説を務める元マラソン選手でスポーツジャーナリストの増田明美さんといえば、細かすぎる選手情報でバラエティ番組に特集されるほど。そんな増田さんが本番を前に、女子1万メートルに出場する日本人選手の情報をお届けする。
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女子1万メートルの鈴木亜由子さん(24、日本郵政)の支えは、なんといっても「落研(落語研究会)出身」のお父さん。ご実家は、愛知県豊橋市で米屋を営んでいます。ここがまた心温まるお店で、東日本大震災後に私が初めて訪れると、玄関先に福島産のお米が並んでいました。風評被害で苦しむ福島を勇気づけようとしていたのです。
お父さんは誰が来ても気さくに家にあげて話してくださる方です。横で微笑むお母さんからは、初訪問後に「この前は緊張していてお話できませんでした。いつも亜由子を応援してくれてありがとうございます」との丁寧なお手紙を頂きました。私は炊きたてのご飯のように温かいこの一家が大好きで、もう3回も訪れました。
亜由子さんは名古屋大学経済学部卒で卒論テーマは「女性の社会進出と経済効果について」という才女ですが、お喋り好きなお父さんは「突然変異だ」と謙遜することしきり。彼女は日本郵政に所属し、今も週4回、東京の小金井郵便局で働いています。
その亜由子さんと同じ日本郵政所属で女子1万メートルに出るのが関根花観さん(20)。通常、同じチームに強い女子選手が2人いると足を引っ張り合いますが、2人はお互いを尊敬して高め合うことができる姉妹のような間柄です。
【プロフィール】ますだ・あけみ/スポーツジャーナリスト。1964年、千葉県生まれ。成田高在学中、長距離種目で日本記録を樹立。引退までの13年間で日本記録12回、世界記録を2回更新。緻密な取材に基づく「詳しすぎる解説」で人気を博す。
※週刊ポスト2016年8月5日号