日本の成長戦略の1つに掲げられているのが「観光」だ。たしかに、数年前まで600万~800万人台だった訪日外国人客数は一気に2000万人近くまで達し、観光地では数多くの外国人を見かけるようになった。さらに日本への観光を伸ばすにはどうすればいいか。大前研一氏は、「外国人に新たな日本を発見してもらう必要がある」と指摘する。
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外国人観光客に発見してもらうべき新たな日本は「京都」「奈良」「箱根」「日光」「高山」「銀座」「秋葉原」「東京スカイツリー」「渋谷109」といった“点”ではない。日本の美しい自然を満喫できる“線”や“面”の周遊ルートでなければならない。
各自治体も「インバウンド需要」を取り込むべく地元の観光地をプッシュしているようだが、なかなか浸透しない。役所が“点”で考え、ちまちまとバラバラに打ち出しているからだ。
一方、観光庁は外国人旅行者の地方への誘客を図るため、「ゴールデンルート(東京~富士山~関西)」に次ぐ観光コースとして、北海道、東北、中部、関西、四国、九州など7つの「広域観光周遊ルート」を認定している。
しかし、それらはあまりにも「広域」すぎる。1週間以上の滞在が普通の欧米人観光客はともかく、中国人観光客の旅程は3泊4日か4泊5日が主流なので、もっとエリアを絞り込み、1日単位のコースを組み合わせた短期間のルートを設定すべきである。
では、日本の美しい自然を満喫できる“線”や“面”の新しい周遊ルートは、どのようなものが考えられるか? 大学時代に「通訳案内士」の国家資格を取得してアルバイトで2500人の外国人観光客をガイドし、その後も全国各地を車やバイクで旅してきた私が有望だと思うのは、たとえば北海道の札幌~登別温泉~洞爺湖だ。
登別温泉の周辺には噴煙が上がっている火山や国内トップクラスの透明度を誇る倶多楽湖などがある。2008年の洞爺湖サミットでメイン会場になった「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」は洞爺湖の全景と反対側の内浦湾(噴火湾)の両方を見下ろす標高625mのポロモイ山山頂にあり、壮大なスケールの絶景が楽しめる。