東欧のチェコ在住の中国人生物学者が新種のカブトムシの一種を発見し、祖国の最高指導者である習近平国家主席の名前にちなんで「習氏狼條脊甲」と名付けたが、この昆虫は腐敗した物質を食べて成長することから、中国当局は習氏が侮辱されたとみなして、インターネット上で検索できないようにしたことが分かった。
しかし、このような新種の昆虫の名前には新しくはオバマ米大統領から、古くはカール・マルクスまで多数の例があり、ネット上では「習氏が国民から愛されている証拠。名誉なことなのに、なぜ禁止用語にするのか分からない」などと批判する書き込みも現れている。 香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
新種のカブトムシに「習氏狼條脊甲」と名付けたのはチェコ生命科学大学に在籍する中国人研究者、王成斌氏。王氏は英文の国際学術誌にこの昆虫の生態などに関する論文を8ページにわたって投稿。
論文では、この昆虫に習氏の名前を冠したのは「この特別な名前は、その指導力で祖国を一層強大にしてくださっている中華人民共和国国家主席の習近平氏に捧げるためです」と述べたうえで、「この昆虫は非常に貴重であり、屋外採集を10回行っても、遭遇しないほどだ。
しかも、この昆虫は腐った木を餌にしており、これは習近平氏を象徴している。つまり、習氏も1世紀に1人しか会うことのできない貴重な人物であり、とりわけ腐敗撲滅を唱えており、習氏によって中国の腐敗は日々少なくなっているのだ」と指摘している。
しかし、中国当局はこの説明が習氏を侮辱したものと受け止めたようで、中国内のネット上では「禁止用語」として、検索できないようになっている。
これについて、王氏は「親愛なる習近平主席。これは非常に珍しい昆虫であり、名前は永遠に残ります。これは何と素晴らしい栄誉なのです」と述べて、逆に、中国当局の検閲は誤解に基づくものとの見方を明らかにしている。
中国ではこれまでの長い歴史の中で、為政者が誤解や偏見に基づいて無辜の民を多数侮辱したり、命を奪ったりする例が多数みられるが、ネット上では今回の件を「考え過ぎ」と指摘するこんな声も。
「オバマ大統領の名前が新種のクモの名前に付けられているほか、マルクスやヒトラー、ローマ教皇のジョン・ポール2世、あるいは孔子などにちなんだ昆虫の名前がある。これは王氏の言う通り、極めて名誉なことなのだ」