今後考えられる在日米軍の縮小・撤退は、日本を安全保障上の危機に晒すことになる。ドナルド・トランプ氏が米大統領になるか否かにかかわらず、日本における米軍の力が減じていくのは避けられないだろう。ならば、どう自力で国を守るかを考える必要がある。制約が多い自衛隊ではなく、国際的に見てもスタンダードな国防軍の創設を想定したとき、どれくらいのコストがかかるのか。
国防軍を創設する場合、現実的に大きな壁となるのは、コスト(費用)だ。
「日米同盟にも、コストがかかっています。一方、仮に日米同盟がない場合にどのくらいのコストがかかるのか。自主防衛を議論するにはそうした総合的な評価が必要です」
そう語るのは、防衛大学校の武田康裕教授だ。武藤功・防衛大学校教授との共著『コストを試算! [日米同盟解体]』(毎日新聞社)での試算を紹介しよう。
●日米同盟のコスト
日本の防衛費は4兆6453億円(数字は武田氏が利用した2012年度予算に基づく)で、これには米軍の駐留に関わる経費負担も含まれる。日本は「思いやり予算」などで在日米軍の駐留経費や米軍再編関係経費など4374億円を負担しており、この額が同盟維持の「直接経費」となる。
同盟維持にかかるコストは他に「間接経費」がある。
「税収や経済効果など、基地があることで日本が失う利益(機会費用)は約1兆3284億円。これを直接経費の4374億円と合算した計1兆7658億円が日米同盟を維持する総コストになります」(武田教授)